4月21日から全国の映画館で公開中の映画『高速道路家族』で主演を務めるチョン・イルが、プロモーションで来日し、映画公開前日に個別インタビューが行われた。本作は、ホームレス一家と裕福な夫婦、2つの家族の偶然の出会いが火種となるパラサイティック・スリラー。劇中、チョン・イルはホームレス一家の父親ギウ役を演じ、家族を愛し大切にする父親の姿、そして話しが進むにつれて狂気的に豹変する姿を見せている。インタビューでチョン・イルは、ギウ役を演じて得たことや「人生の選択」にちなんだ2択の質問、これからの俳優人生の歩みなどについて語ってくれた。
『高速道路家族』はチョン・イルにとって7年ぶりの映画復帰作。チョン・イルにギウ役を提案したイ・サンウン監督は、チョン・イルの「今まで演じた役とは雰囲気が違う役を演じてみたいと思っていた時に台本を受け取った。これまで韓国映画では見られなかった役で、自分も今まで演じたことのない役だったのでとても魅力的だった」という、挑戦の意思が込められた返答を聞き「優しそうな顔立ちのチョン・イルがギウを演じれば大きな影響力を与えられるだろう」とキャスティングに確信を持ったそうだ。しかし、これまでに爽やかで好青年を演じるイメージから狂気的な役を演じることに心配がなかったわけではなかったと語るチョン・イル。
「(話しが進むにつれて)ギウの感情が変化していく部分が一番心配していたことでした。でもその部分に惹かれて作品を選んだので、果たして僕がどこまで感情をコントロールしながら演技することができるのか、自分の限界を知ることができる作品にもなりました。そういった部分が僕にとって挑戦ではありましたが、映画を観た方々は良い評価をしてくださったので、僕の挑戦は無駄ではなかったのだと思いました。この役を演じてみて自分にも狂気的な姿があるんだな(笑)って思いましたし、その当時は覚えていないほど役に入りきって撮影に臨んでいました。俳優として、演技の限界というものがあるのか、そういった自分の限界を試すことへの挑戦も良いかなと思いました。演技に自信を持てるようにしてくれた作品にもなりました」。
ギウ一家は人々から傷つけられ、社会で生きることを諦めた光の当たらない家族。ギウは他人を信じたことで人生が変わり、家族だけが自分の味方で家族と一緒に過ごすことがギウにとっての幸せだった。そういった心に傷を負ったギウをどのように感じながら演じていたのだろうか。
「ギウがとても善良で心の清い人物だったからそんな人生を送ることになったのだと思います。すべてがチャンスを逃したせいではありませんが、(セーフティーネット)という救済されるチャンスを逃したかのように社会がギウを不条理の状態にさせたことはとても残念なことだと思いました。僕も撮影が終わり、映画を観ながらギウはとても可哀想だと思いながら見ていました。もし、ギウが新しい人生を生きることができるのであれば、可哀想な人生ではないことを願いたいと思っています」。
可哀想な人物ではあるが、家族と一緒にいるギウの姿はとても幸せそうで、サービスエリアでの生活も楽しそうに見える。実際、サービスエリアで撮影してみた感想を聞いてみると、彼は「サービスエリアは、ただ通り過ぎていたような場所だったのですが、そこで撮影しながらずっと過ごしてみたら、とても便利で生活するのに悪くない場所だと思いました(笑)。排気ガスとかを除けば快適な環境として作られているので、僕は満足しながら撮影していました。本当に今回体験して思ったのが、実際にサービスエリアで野宿している人がいるんじゃないかなって思うくらい、僕もまた違った新しい視点で高速道路のサービスエリアを知ることができました」と語り、サービスエリア内にある食べ物については「サービスエリアで売っている食べ物を一つ残らず食べました(笑)。もう当分の間はサービスエリアの食べ物は飽きているので食べないと思います(笑)」とうんざりした表情を浮かべていた。
劇中、お腹を空かせた子どもにギウが「お腹がいっぱいだと思えばお腹がいっぱいになる」というやるせない気持ちにさせるセリフが出てくる。自分をコントロールする呪文のようなものでもあるが、チョン・イルにも自分の気持ちを楽にさせる言葉があるそうだ。彼は「僕はいつも撮影する前とか、ファンミーティングをするときもそうですが、自分にかける言葉があります。何かをする前に「ハルスイッタ ハルスイッタ ハルスイッタ(出来る)」と3回唱えます。自分に自信を与えるように、その言葉は必ず唱えています。そうすることによって、気持ちも楽になる感じがするんです」と微笑んだ。この極上スマイルで多くの女性を癒してくれる彼が、実際に家族を持ったらどんな家庭になるのか、理想の家族像についても聞いてみた。
「そうですね。これから家庭を築くことがあるなら・・・。うーん、人と人が生きていく上で何らかの問題が起きないことはないと思います。そんな問題に出くわすことがあれば、賢明な判断、譲り合い、そして相手のことを配慮する気持ちを常に持っていなければならないと思います。そして、父親になるのであれば、自分の子どもを常に応援して見守る、心強い支えになるように僕自身も成長しなければならないと思っています。良いパパ、良い父親という言葉は、何が合っているかはわかりませんが・・・、そうですね・・・。もし自分の子どもが悪い道に進もうとしたときに、良い道に導いてあげるのが親の役割だと思っています。そんな助言ができるような親になりたいと思います。僕の両親も僕に悩み事があればいつも僕の悩みを聞いてくれて、アドバイスをしてくれます。いまもそうしてくれていますし。なので、僕にとってとても心強い支えになっています」。
映画は人との出会いで人生が大きく変わっていく。チョン・イルにとって、人生を変えた出会いエピソードについて聞いてみると、彼の代表作であるドラマ『思いっきりハイキック!』を挙げた。
「出会いのエピソードと言えば・・・、『思いっきりハイキック!』を演出されたキム・ビョンウク監督に出会ったことが僕の人生を変えた出会いだと言えます。もし監督に出会わず、『思いっきりハイキック!』にも出ていなければ、こうして今まで俳優を続けられることができていただろうかということをいつも考えています。たくさんの方々がいまも『思いっきりハイキック!』を話題にしてくれますし、また時にはその作品が僕の足を引っ張っているのではないかと話される方もいます。でも僕は俳優に代表作があるということはとてもありがたいことだと思っています。その作品があるからこそ、いまもこうして俳優活動をすることができていると思うからです。実際、何かを初めて学ぶことがとても重要なことだと言いますが、僕の場合はドラマでイ・スンジェ先輩とナ・ムニ先輩が祖父母役をされていて、その方々からのアドバイスはいまでも僕の俳優生活においてとても大きな力となっています。お二方からのアドバイスは一生忘れず、そして感謝の気持ちを持ちながら俳優活動をしています」。
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