「コラム」連載 康熙奉(カン・ヒボン)のオンジェナ韓流Vol.132 「時代を捉えた『相続者たち』」

イ・ミンホとパク・シネが主演した『相続者たち』はそれまでにないタイプの青春群像ドラマだった。韓国で放送が始まったのは2013年の10月だが、すぐに大評判になった。このドラマのどこがそんなに面白かったのか。

葛藤の連続

韓国ドラマのストーリーの多くは、葛藤の描き方がポイントになっている。主人公たちの身分格差、親と子の価値観の違い、出口が見つからない三角関係……さまざまな葛藤が韓国ドラマにはあふれている。そんな葛藤を巧みに物語に取りこんで、まるでジェットコースターのように激しい展開に持っていくのが韓国ドラマの真骨頂だ。
そのスタイルを『相続者たち』はしっかり受け継いでいる。しかも、それだけではなく、今という時代を的確に捉えていた。そこが、視聴者から圧倒的な指示を受けた理由であった。

ドラマは第1話から葛藤の連続だ。たとえば、ヒロインのチャ・ウンサン(パク・シネ)。彼女の毎日の生活は不満だらけだ。同世代の若者たちが、有名なレストランに行ったとか面白い映画を見たとか自慢話をしていても、ウンサンは貧しい生活の中で、夜遅くまでアルバイトに明け暮れている。
そんな彼女の唯一の救いが、アメリカへ行った姉だった。その姉から、お金持ちの男性と結婚するという知らせが来た。ウンサンにとってはこれこそが救いの神だった。彼女は、二度と戻らない覚悟を決め、母の反対を押し切ってアメリカに行ったのだが、待っていた現実は厳しかった。姉は、アルコール中毒の男性と同居している貧しいウェイトレスに過ぎなかったのだ。

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  • 2020.10.03