秋夕では地上に降りてくる先祖にご馳走を捧げる
韓国は今でも正月とお盆を旧暦で行なう。そこが日本との大きな違いだ。韓国ではそれほどに旧暦が重宝されているのだが、お盆は「秋夕」(チュソク)と呼ばれていて、かならず墓参りを行なう。
恒例の民族大移動
韓国では、旧暦の8月15日が秋夕になる。
今年は9月13日が該当している。
例年だと、9月下旬から10月上旬にかけて秋夕になることが多いのだが、今年はちょっと早めだ。
そして、秋夕になると、韓国は3連休になる。今年は暦の関係で9月12日から9月15日までの4連休になる人が多いことだろう。
大都市に住んでいる人たちも秋夕には大半が故郷に帰る。墓参りという重要な儀式があるからだ。
なにしろ、韓国では先祖を祀るチェサ(祭祀)の儀式がとても多いのだが、あくまでも家で祭壇にご馳走を並べて行なうのが普通で、命日でも墓参りには行かない。
しかし、秋夕だけは特別で、一族総出で墓参りに行く。このように重要な日になっているのだ。
それだけに、秋夕になると、都会から故郷に帰る人たちで高速道路は大渋滞になり、列車は超満員だ。
遠くのお墓に出掛ける
苦労して故郷に帰り、秋夕の当日に一族がみんな集まる。
儀式は朝から行なわれる。前日に一族の女性たちが作っておいたご馳走を祭壇に並べ、秋夕に合わせて先祖たちが地上に戻ってきたと仮定し、先祖たちにたっぷりご馳走を食べてもらう。
こうした儀式が30分近く行なわれる。それが終わると、今度はご馳走を列席者たちでしっかりいただく。
この場は宴席となり、一族で大いに盛り上がる。
ほどよい時間になると、今度は墓参りに出掛ける。韓国のお墓は風水の関係で山の中腹や遠方にある場合が多く、出掛けるのも一苦労なのだが……。
お墓に着くと、お酒の杯を捧げる儀式があり、子孫がチョル(目上の人に対する挨拶のことで、ひざまずいて頭を下げる動作を繰り返す)を行なう。
このときに足元がふらつく男性がいる。宴席で飲みすぎたのである。
「しっかりしろ。先祖に申し訳ないぞ」
長老から叱責される……これもまた、秋夕でよく見かける光景だ。
文=康 熙奉(カン ヒボン)