「コラム」連載 康熙奉(カン・ヒボン)のオンジェナ韓流Vol.86「訓民正音とは何か」

「訓民正音」の解説書

「訓民正音(フンミンジョンウム)」とは、現在のハングルのことだ。朝鮮王朝の4代王・世宗(セジョン)の主導によって創製され、1446年に正式に公布されている。まさに、民族独自の文字が「訓民正音」なのである。

極秘に作った理由

1446年以前の朝鮮半島では、正式な文字は漢字しかなかった。
しかし、漢字は覚えるのが難しく、学習する機会がない庶民は漢字を使えなかった。
世宗は「庶民が文字を知らないのは不憫だ」と想い、朝鮮半島に住んでいる人たちの発音を正確に表せる簡単な表意文字の創製を計画した。
そして、完成したのが「訓民正音」だ。この名称には「民衆に訓(おし)える正しい音」という意味が込められている。

世宗が今でも韓国で最高の偉人として尊敬されているのも、「訓民正音」の創製という偉業があったからだ。
実は、世宗はかなりの反対が出ることを予測して、民族独自の文字の創製を極秘に行なっている。
なぜ、そこまで極秘にやらなければならなかったのか。果たして誰が反対したのか。
反対勢力の1つは、朝鮮王朝の政治を担った高官たちだ。
彼らは科挙に合格して出世してきた知識人で、難しい漢字を自在に操れることで特権階級としての地位を維持していた。逆に、統治される側の庶民が文字を知らないのは好都合でさえあったのだ。
よって、庶民が簡単に覚えられる文字の創製には反対の立場だった。

(2ページに続く)

2019.08.31