「コラム」連載 康熙奉(カン・ヒボン)のオンジェナ韓流Vol.86「訓民正音とは何か」

「ハングル」の意味は?

もう1つの反対勢力は中国である。
当時は明という大国が中国大陸を支配していたが、明は周辺国が独自の文字を持つことを警戒していた。つまり、自分たちの文明をそのまま受け入れることを周辺国に求めていたのだ。
以上のような事情があって、世宗は民族独自の文字の創製を極秘に進めて、完成してから一気に発表した。
この文字は画期的で、庶民は漢字よりはるかに簡単に、自分たちが語る言葉を表記できるようになった。

しかし、官僚はこの新しい文字の普及に熱心ではなく、相変わらず漢字が朝鮮王朝の公式文字になっていた。象徴的なのが「朝鮮王朝実録」だ。この正式な歴史書は最後まで漢字で書かれている。この一事をもってしても、いかに「訓民正音」が軽視されたかがわかる。
その「訓民正音」が「ハングル」と呼ばれるようになったのは19世紀末だ。優秀な国語学者が出て文法的にも整理され、一気に普及した。そして、韓国が1948年に建国されてからは公式の文字となり、現在に至っている。
「ハングル」の意味は、「ハン」は「偉大な」で、「グル」は「文字」ということ。よって、「ハングル」は「偉大な文字」ということになる。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

2019.08.31