SABU監督:日本での僕は結構気を使う方で現場では余計な事を喋ったり、笑わせたり、現場を盛り上げる様にしています。今回は日本人は僕一人だけでコミュニケーションは通訳を介していたので、伝えたいことだけをストレートに伝えるだけにしました。
──SABU監督直筆による絵コンテもスタッフ全員のビジョンの共有に役立ちそうですね。
SABU監督:絵コンテは監督デビュー作の時から自分ですべて描いています。言葉が通じない分、具体的に絵で説明が出来たのでやりやすかったです。
大石圭:この熱量には感激です。絵コンテを初めて拝見した時は誰が監督を務めるのか聞いていなかったので、書き込まれた日本語を見て「日本育ちの韓国の方なのかな?」と思っていました(笑)。
大石圭:原作執筆当時は僕も熱帯魚に凝っていまして、自分でも沢山飼っていました。水槽の管理が大変で(笑)。
SABU監督:大石さんは熱帯魚がお好きだろうなと、原作を読んで感じました(笑)。実は僕も大石さんと同じ時期くらいに熱帯魚を飼っていました。湿度の点でいうと、僕は汗とか人間のギドギドしたものが好き。予算の問題で実現しませんでしたが、熱帯魚屋の天井から水が漏れているという表現をやってみたかったです。
大石圭:なるほど、それが魚をすくう網から垂れる雫に変わったわけですね。靴にしたたる様子がどこか象徴的に見えました。
SABU監督:ちなみに原作にはない海のシーンをあえて岩ばかりの場所にしたのは「敷石のひとつを裏返す。そこには、名もない虫たちがさざめいている」という原作の表現ともマッチするだろうと思ったからです。
SABU監督:イ・ジフン君は芝居も上手いし器用。ただ男前なので、事前に男前なことをしないようにお願いしました。色々とアイデアを持ち込んでくれたものの動きがスマートになりすぎるので、それをそぎ落とす形で事細かく演出しました。役名が同じジフンなのは単なる偶然です(笑)。イ・ユヌさんは声のトーンが印象的で、元アイドルという歌って踊れる経歴も最高だと思いました。芝居もやらせればやらせるほど上達して、魅力的になっていく。シン・スハン君はとても真面目で役に没頭するタイプ。暴力シーンやセックスシーンも鬼気迫る形で取り組んでくれました。
大石圭:暴力シーンは生々しかったですね。さすがに僕はあそこまでは書いていません(笑)。原作超えです。でも映画として手加減なくリアルに表現してもらえて嬉しかったです。サイフォンでコーヒーを淹れているところも好きで、細部まで丁寧に作られていることに感動しました。
SABU監督:原作もサイフォンだったのでやりたかったんですが、実は韓国にはサイフォン式コーヒーの文化がない。「何ですかそれは?」と言われました。美術部に探してもらったら偶然日本製のものが見つかってみんなビックリ(笑)。
大石圭:ヒョンオ(シン・スハン)がカウンセリングルームで狂ったようにダンスする場面は驚きました。原作では普通のサラリーマンですが、医者になったことで彼のオシャレさとか苦悩が増したような気がしました。
SABU監督:ダンスは撮影初日の前日に閃いて夜中に絵コンテを送って、急遽追加した場面です。急に変わったので現場はザワザワしましたが、スタッフの中には僕の作品ファンもいて「これぞSABU監督!」と思ってくれたようです。診察室はヒョンオが唯一自分を曝け出せる場所であり、患者を支配できる場所。それまでの静謐なトーンを激しい音楽と共に一転変化させるというか、エロチックな妄想も入ってきたりするのでシーンとしても面白くなると思いました。字で考えるのと絵で考えるのとでは全然違って、絵コンテにすると色々なアイデアが浮かびます。ポスターにもなっている、ベッドの上と下でジフン(イ・ジフン)とイェウン(イ・ユヌ)の指が触れそうになっているシーンは脚本にはないもので、絵コンテを描いて自分が作ったものです。
──これから映画をご覧になる方にメッセージをお願いいたします。
SABU監督:これまで出来なかったやりたい事を今回やり尽くすことが出来たので、自分に対する自信がつきました。韓国での公開の際の評価も高かったので手応えしか感じていません。日本公開されるとは思っていなかったので、それも嬉しい。見応えのある作品だと自負しているので、楽しんで観ていただきたいです。
大石圭:原作を書いていた時に主人公・三井は新美南吉の児童文学『ごん狐』のごんなのかもしれないと思っていました。今回韓国で映画化されたことで、三井の持つ犠牲的精神は国を超えた普遍性があると感じました。美しく切なく悲しくて、しかも気持ち悪い主人公を応援したくなるような映画もそうないので、是非ご覧になっていただきたいです。原作者である私自身、何回か泣きました。ラストシーンは必見です。
SABU監督:今日一番の嬉しい誉め言葉です!
更に、長年忘れられない女性イェウン(イ・ユヌ)と偶然再会を果たし、再び彼女に惹かれ、24時間彼女を監視する異常なストーカー男のジフン役を怪演した、俳優イ・ジフンの急遽来日が決定!公開を記念して、公開日5月31日(金)に公開初日舞台挨拶を実施することも決定。本作のメガホンを取った、SABU監督と登壇し、本編を鑑賞した観客とともに本作を語り合います。そして今回特別に舞台挨拶終了後、イ・ジフンとSABU監督のサイン会を実施予定。
日本公開に向け、俳優イ・ジフンからメッセージ動画が到着。役柄とは正反対の爽やかな笑顔で登場。自己紹介を日本語で披露し、日本での公開を待ち侘びているファンの皆様に「歪んだ愛を描いた切ないラブロマンスである『アンダー・ユア・ベッド』公開されたら沢山の方々に観にきてもらいたいです!」と、強いメッセージを送った。
イベントは5月31日(金)シネマート新宿 18時25分の回で実施予定。イベント付きチケットは、劇場オンライン販売システムにて5 月25 日(土)0:00(=5 月24 日(金)24:00)より販売開始。舞台挨拶はファンの方にとっても特別な時間となるだろう。
映画『アンダー・ユア・ベッド』初日舞台挨拶&サイン会決定
タイトル表記:『アンダー・ユア・ベッド』
公開表記:5月31日(金)全国ロードショー
映倫区分:R18+
画像クレジット:©2023, Mystery Pictures, ALL RIGHTS RESERVED
映画『アンダー・ユア・ベッド』作品情報
原作:大石圭『アンダー・ユア・ベッド』(角川ホラー文庫/KADOKAWA刊)
監督・脚本:SABU 出演:イ・ジフン、イ・ユヌ、シン・スハン 配給:KADOKAWA
2023年/韓国/韓国語/99分/カラー/スタンダード/5.1ch/原題:언더 유어 베드/字幕:北村裕美
STORY
学生時代から誰からも名前すら覚えてもらえなかった孤独な男・ジフン(イ・ジフン)には忘れられない女性がいた。 それは、初めて大学の講義中に名前を呼んでくれたイェウン(イ・ユヌ)だった。 数年経っても忘れられないジフンは彼女を探し出し再会を果たすも、彼女は覚えていなかった。 再び彼女に強烈に惹かれてイェウンを24時間監視するようになったジフンは彼女が夫であるヒョンオ(シン・スハン)から激しいDVを受けていることを知ってしまうがー