原作は、「呪怨」「殺人鬼を飼う女」など数々の名作を世に送り出した大石圭の角川ホラー文庫処女作「アンダー・ユア・ベッド」。2019年には高良健吾主演で実写化され、今までにない役どころで注目を集め話題をかっさらった。そんな衝撃作が海を超え、韓国でついに再映画化されることになった。
メガホンをとった監督は『蟹工船』(09)や『うさぎドロップ』(11)、『砕け散るところを見せてあげる』(20)など日本でも評価の高いSABU。
孤独な人生を送る男・ジフン役には、「新米史官ク・ヘリョン」や「青い海の伝説」など様々なジャンルのドラマや映画で活躍中の期待の若手俳優イ・ジフン。ジフンが長い間一途に思い続ける女性・イェウン役には、期待の新人女優イ・ユヌを抜擢。夫から激しいDVを受ける難役を体当たりで演じる。さらに暴力を振るうイェウンの夫役を舞台や映画を中心に活躍する実力派俳優シン・スハンが演じ、SABU監督韓国デビュー作にふさわしい面々が勢揃いした。
この度、読者が感情移入して応援したくなるような“魅力的な犯罪者”を生み出した「アンダー・ユア・ベッド」の原作者である大石圭と“世界的なエクストリームディレクター”で韓国版の監督を務めたSABU監督の対談が特別に実施された。公開されたオフィシャルインタビューでは、隠された原作の誕生秘話や原作からインスピレーションを受け、撮影でごだわったシーンの裏話などがたっぷりと語られている。
以下、大石圭&SABU監督 オフィシャル対談
──SABU監督にとって韓国映画初進出作ですね。
SABU監督:1990年代後半に韓国で日本の大衆文化解禁があって、岩井俊二監督の『Love Letter』(1995年)や北野武監督の『HANA-BI』(1998年)がヒットして、僕の『ポストマン・ブルース』(1998年)も上映されたりしました。その頃から韓国でやってみたいという気持ちはずっとあったので、監督としてのオファーを頂いてやっと願いが叶いました。脚本を読んだ時は暴力描写と性描写のハードさに若干ひるみましたが、これまでコメディ色の強い作品の多かった自分としては、シリアスなスタイルに挑戦できるいい機会になると思いました。
──SABU監督をひるませた『アンダー・ユア・ベッド』の原作はどのような経緯で生まれたのでしょうか?
大石圭:原作は角川ホラー文庫からの初めての依頼で書いたものです。しかし自分はそれまで純文学を書いていたもので、一体何がホラーになるのかわからなかった。そこで思い出したのが、妻が一人暮らしをしていた時に実際に起こった出来事でした。家に帰るたびに物の配置が変わっていたり、下着がなくなっていたり、アルバムから写真が抜かれていたりする。しかし警察に訴えても相手にしてくれない。それでも妻が「絶対に他人が入っている!」と言い続けて調べてもらった結果、なんとそのアパートの大家の息子が合いカギを持っていたんです。…これは相当怖いですよね。ならばそれをベースに書こうと思って生まれたのが『アンダー・ユア・ベッド』です。
──着想は実話だったんですね…。恐ろしい。そんな原作が韓国で映画化されたことに、どのような感慨がありますか?
大石圭:実際に完成した作品を観た時は嬉しくて泣きそうになりました(笑)。しかも画も美しくて音も素晴らしい。どのように撮影されたのかわかりませんが、とても綺麗な映画だなと。ちなみに実際に怖い体験をした妻も「オシャレな映画になった」と絶賛しています。
SABU監督:画と音にはかなりこだわりました。画面アスペクト比を4:3にしたのは自分としては初めての試みで、スタンダートサイズのフィックスでアート的な映画を作ってみたいという思いが昔からあったからです。4:3は画面に集中できるサイズなので、物語に没入してもらうという狙いがあります。たまたま音響効果スタッフが日本語を喋れる人だったので、密にコミュニケーションを取って音の面も細かく調整。原作者の大石さんにその点を褒めてもらえて嬉しいです(笑)。
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