「記者会見」帰国後初!『ベイビー・ブローカー』是枝裕和監督が凱旋記者会見に登場! 「最後の最後まで一緒に走ってくれました」 最優秀男優賞ソン・ガンホとの強い信頼と絆を語る!

韓国では初登場第1位というロケットスタートを切ったが、現地での舞台挨拶もかなり盛り上がったようで「熱狂的な状況で、叫び声がずっと聞こえている感じでした。感想を聞くって感じじゃないんですけど(笑)、観た方の反応はたぶん悪くないと思います」と手応えを口にする。

韓国のプロダクションでの映画制作について「僕の演出のアプローチの仕方は基本的に日本と変わらないアプローチでやらせていただいて、そこは我を通した部分もあります。韓国はアメリカのやり方を現場で導入しているので、脚本はクランクイン前にすべて完成させて、ストーリーボードも全て書いて…ということまでしないとインしないという雰囲気だったんですが、現場で作っていくやり方を通したので、そのへんは僕自身は楽でした」とふり返る。

一方で、韓国の現場で進む「働き方改革」に関しては「良い方向に進んでいる」と高く評価し「週に52時間という労働時間の上限が明確なので、4日働いて3日休むような感覚で肉体的には楽でした」と語る。その上で「映画界だけに言えることじゃないけど、産業自体の年齢構成が、日本は高齢化して、若い人が入ってこないという状況があり、そこは上に立つ者として責任を感じますが、韓国の現場はほぼ20代、30代が中心。(高齢化が)悪いことばかりじゃないと思うけど、韓国では僕の年齢では監督はほぼ引退して現場には立たなくなっている。改革のスピードの速さが、若々しくて元気あるけど、ある年齢層を現場から外すタイミングが早くなっていて、そういう速さが、こういうなかなか変わらない国にいると『早すぎないか?』と心配もしています」と両国の状況の違いについて言及した。


また、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』など近年、アジア映画の評価が欧米で高まっているが、こうした変化について問われると「“アジア映画”という括り自体が広すぎてどう答えたらいいか…」と前置きした上で、自身が海外に赴いた際に感じるアジア映画への注目度についても言及。
「韓国映画の注目度の高さは、今回(のカンヌで)一番感じたし、(この10年で見ていると)『パラサイト 半地下の家族』で結実して、カンヌに来ている(韓国の)ジャーナリストの数は倍になっていると聞きました。今回、早川(千絵監督/『PLAN75』)さんがカメラドール特別表彰を受賞しましたが、日本からも若い才能が出てきている感じは間違いなくあります。それは濱口さんが大きな成果を上げて、でも濱口さんも急に出てきたわけじゃなく、ヨーロッパでは『ハッピーアワー』がフランスで公開された時、結構ヒットして、そのあたりから『濱口をどう思う?』と(海外での取材で)必ず聞かれるようになりました。挙げられる名前が変わっていくタイミングがあって、濱口さんは2015年くらいから聞かれるようになりました。それがいま、韓国の大きな声にちょっと負けている感じはします。もう少し、いろんなサポート体制が充実するといいなという気持ちはあります」。

また、是枝作品と言えば子どもの俳優に台本を渡さず、口伝えなどで状況を説明し、自然な演技を引き出す手法が有名だが、本作でも途中から旅に加わる少年ヘジンを演じたイム・スンスに対し、同じ手法を使ったということで「オーディションで見つけた子を選び、台本を渡さず、通訳を介してセリフを渡していきました。勘のいい子だったので、旅をしながらだんだん悲しい話になっていくのは彼の表情にも現れていると思います」と明かす。

この少年の演技について「映っているものは最高だと思います。映画の中に残っているものは本当によかった」と惜しみない称賛を送る一方で、演じている時以外の時間に関しては「本当に大変でした…」と苦笑い。「映画の現場が楽しくて仕方なかったみたいで、はしゃいじゃってテンションが上がって止まらなくなっちゃって…。カン・ドンウォンが面倒を見てくれるようになって、これはみんな静かに撮りたい気分だなという時は、ドンウォンが遊びに連れて行って、スケボーを一緒にやったり、面倒見がいいんです。どんなにはしゃいでも怒ったりはしませんが…本当に大変でした(苦笑)。モーテルでのシーンで、ドンウォンとイ・ジウンさんが赤ちゃんにミルクをあげながら、ちょっとしっとりしたやりとりをするシーンがあるんですが、あのシーンでベッドで彼が寝ているんですが本当に寝てるんです。はしゃぎ過ぎて『ここではしゃがれるとシーンが成立しない』と思ったんですが、『これ、ちょっと暗くすれば寝るぞ』と思って暗くしたら本当に寝て、あのシーンが終わるまで3時間くらい熟睡していました」と明かした。

もうひとり、子役以上に小さな赤ちゃんが全編を通して出演しているが、コロナ禍のさなか、クランクインの2か月前に決めなくてはならず、生まれて1か月くらいの赤ちゃんの動画を見て「顔とかではなく、動きのいい子。音に反応して動いてくれる子を選んだ」という是枝監督。それが見事にハマったようで「ガンホが動けば目で追うし、顔を触ったり、髪の毛を触ったり、目の前の世界に感心がある子で、それがとてもよかったです。全く苦労しなかった」と明かす。「ホテルの広場で、赤ちゃんを渡された女性のほほを触って、女性が『触ったわ!』と言うんですけど、あれはアドリブです。あのシーンは『すごいな』と思いました」と0歳の名優を称賛した。

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2022.06.13