●(ソン・ガンホさんに)映画のオファーを受けた経緯について聞かせてください。
ソン・ガンホ氏:監督はいつも、シナリオを全て書き終えてから渡してくる訳ではありません。本作に関しても、4 年くらい前にイメー ジの説明がありました。それは、酔っ払いが立ちションをして、それが窓を伝って壁に下りて来る、そんな半地下に住む家族の話で す。そして 2 回目には、貧しい家族がお金持ちの家族の中に入っていくという話を聞かされました。私は当然社長の役だと思って いたのですが、まさか半地下にいる役だとは…夢にも思いませんでした(笑)。
●お互いの印象を教えてください
ソン・ガンホ氏:監督とはもう 20 年一緒に仕事をしています。作家として監督として、社会に向ける温かく時に鋭いまなざしが、よ り深く広くなっています。俳優としてそれを見守ることができるのは感動的なことです。これからも監督の世界を見せてほしいと思 います。
監督:今回の撮影で、クライマックスのシーンは撮る前に非常に悩みました。ソン・ガンホさんのクローズアップなのですが、主人公 がそこでしてしまう突発的な行動は、一部の観客にとってはおかしく感じられるのでは、説得ができないのでは、論争を巻き起こ すのではと。ところがとりあえず撮ってみようと撮影して、モニターを見たら、その悩みはきれいに洗い流されました。まさにその人 物そのもの、彼のまなざしと表情、醸し出されるものを見て、私のそれまでの悩みは無意味なものだったと思いました。最近、ある アメリカの評論家があの場面を「今年のクローズアップ」だと評価しました。とても嬉しい評価です。偉大な俳優だからこそ、成し 遂げられる瞬間だと思いました。
●アカデミー賞について
監督:こればかりはどうなるかわかりません。予測は難しいです。トロント映画祭で是枝監督にお会いしました。監督はパルムドー ルの後にオスカーにノミネートされました。「これから忙しくなるけど頑張ってね」と言ってくださり、とても嬉しかったです。万が一、 本作がオスカーにノミネートされたら、また映画をみて分析してくださいね。
オスカーの話題が出ると会場からは大きな拍手が沸き起こり、映画を観終わった観客からの大きな期待が寄せられた。
(3ページに続く)