懲罰を受ける罪人の心境
すでに思悼世子は涙声になっいる。彼は必死に声をしぼりだした。
「私にはかんしゃく持ちという持病がありまして……」
その言葉を英祖はあっさりと突き放した。
「もう、よい。すぐにここを立ち去れ!」
きつく言われた思悼世子は仕方なく寝殿の外に出て、むしろを敷いてその上に平伏して待機した。まさに懲罰を受ける罪人の心境だった。
英祖のもとに洪鳳漢が近づき進言した。
「殿下に忠誠を誓う者は東宮にもそうすべきです。羅景彦の不忠は今や論ずる必要もないほどです。倫理を正さなければなりません」
洪鳳漢は、思悼世子に仕えながら主人を告発した羅景彦を厳罰に処する考えをはっきり表明した。
しかし、英祖は洪鳳漢の言葉に怒り、彼を罷免しようとした。他の重臣が取りなして英祖もなんとか機嫌をなおしたが、羅景彦を処罰しようという気はなかった。むしろ、“世子の悪行をよくぞ教えてくれた”という心境だった。
(第3回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)
出典=「実録!朝鮮王朝物語/トンイからイ・サン編」
コラム提供:ロコレ
http://syukakusha.com/