反乱の首謀者?
英祖は、重臣たちに対して詳細に調査せよと命じた。
そのとき、領議政(ヨンイジョン/総理大臣)の洪鳳漢(ホン・ボンハン)がこう言った。
「東宮におかれましては、普段から怖がってオドオドする癖がありますので、こんな告発を聞いたら、とうてい平常心を保てないでしょう。できるだけ静かに行ないたいと思います」
英祖もこの意見に同調した。
洪鳳漢はすみやかに思悼世子のもとに出向いた。
彼は思悼世子の岳父である。自分の娘が思悼世子の正妻なのだ。それだけに、洪鳳漢が思悼世子の肩を持つのが当然と思えるのだが、事実はちょっと違っている。老論派に属する彼にはさまざまな思惑があったのである……。
それはともかく、洪鳳漢から“反乱の首謀者として告発されている”ことを聞いた思悼世子は驚愕し、あわてて英祖のもとにやってきた。それが亥(い)の刻(午後9時頃から11時頃の間)だった。
思悼世子が英祖に謁見する前に、洪鳳漢が英祖にこう上奏した。
「東宮を罪人のようにみなしては決していけません。なにとぞ穏やかに……」
英祖はゆっくりとうなずいた。(3ページに続く)