「イ・ミンギさんは、プライベートでも親しい仲なんです。数日前にも私の地元でお酒を飲みました。お互いの家の近所でお酒を飲んだりする関係が10年以上続いています。そういった仲ということもあり今回の役を頼むことになったのですが、忙しい中でも快く引き受けてくれました。いざお願いしてみると、彼のことはよく知っている関係でありながら、現場では驚かされることがたくさんありました。実はミンギがあそこまでやってくれるとは思いませんでした。ほかのロマンチックコメディの作品を撮っている中で本作に出演してくれて、ロマンチックコメディのキャラクターの感情でいたので、この役を上手く表現できるかどうかちょっと心配していたんです。でも、潜水艦の撮影現場の雰囲気を見ていたら、ミンギはそこでわざと雰囲気を暗くして音楽を流していたんです。なぜなら、気が沈んでいる感情で演じなければいけないので、あえてそういった空間を作ることで感情をコントロールしていました。そして、その感情のまま素晴らしい演技をしてくれました。私が本当に好きなシーンで、カン・ドヨン副長を説得するシーンがあるのですが、私が求めていたものが100だとしたら、彼は200の演技を見せてくれました。その演技を見て、とても幸せでしたし、嬉しかったことを覚えています。本当に真面目で堅実でいい人です。とても好きな俳優さんです」。
「私が考えるリーダーは、高い位置からじっくり眺めているような人がリーダーだと思います。例えば、群れの中で一人だけが遅れているとしたら、その遅れた人を慰めて一緒に連れていこうとするのがリーダーの役目だと思うんです。潜水艦のシーンの場合、端役の方々がたくさん出演していたのですが、演者同士もお互いに面識のない状態でした。でも、シチュエーションとしては一つの家族のような演技をしなければならない状況だったため、キム・レウォンさんがリーダーシップを発揮してくれました。キム・レウォンさんは先輩であり素晴らしい役者なので、出演者一人一人にアドバイスをしていました。例えば、チャウヌさんが初めて現場入りしたときはよそよそしい感じでしたが、そんな彼に近づいていって『おい、どうしてた? かっこいいね。兄さんって呼んで』など、気楽に接したことでチャウヌさんが笑っていたんですよ。そこから2人で座って話すようになっていたんです。チャウヌさんは言葉数が多いほうではないので、誰かが気楽に近づいていくことで打ち解けていくタイプなんです。キム・レウォンさんはそれを感じ取って、場を盛り上げてくれました。それだけでなく、端役の皆さんも近寄りづらくならないように、ビールパーティをしようと計画を立ててくれました。そのパーティは、監督もスタッフも招待されず、役者たちだけで開かれ、ビールやおつまみを買って一日を過ごしたそうです。そこが役者同士が話せる機会となり、端役の皆さんもキム・レウォンさんにだったり、チャウヌさんだったり、イ・ミンギさんだったり、一緒に演じる俳優たちと役についていろいろ話し合いながら楽しい時間を過ごしたようです。そういった時間を設けようとは私は考えもしなかったのですが、必要だと考え用意してくれたのがキム・レウォンさんでした。そういった面でもリーダーシップがすごい俳優だと言えますよね」。
リーダーシップによって共演者やスタッフからの信頼が“あつい”キム・レウォンだったが、もちろん演技に対する熱量も半端なかった。劇中のカーチェイスや格闘シーン、高層ビルから飛び降りるシーンなどは、スタントなしで自らこなしたそうだ。「スタントなしで演じる」と言われたときの監督はどんな気持ちだったのか。
「2つの要素があるのですが、1つはキム・レウォンさんがフィジカルが強くて運動神経が良いことです。ゴルフのレベルも高いですし、釣りもしていて運動も好きな方なので、運動神経はスタントマンに劣らないくらい良いです。そして、自らアクションシーンをするという欲望と意志がひときわ強くて、彼は時間が経つにつれて役にどんどん入っていくスタイルなので、アクションシーンを撮影した後半の時には、完全にカン・ドヨンとキム・レウォンを引き離せないくらい役に入っていました。なので、私が彼にアクションを止めさせようとしても私の言うことを聞くはずもなかったので、私は快くそうしようと言いました。でも、怪我をしないように最善を尽くして、スタントマンたちとも一緒に準備をして、祈る気持ちで見守っていました。最悪、大変なことが起きるかもしれないですから。でも単純に運動神経が良いだけでなく、非常に頭が切れる俳優なので、どうしたら怪我をせずに演じることができるかを知っているんです。なので、怪我することなく自分の役をこなしていました」。
監督はスタントなしの演技だけでなく、映画全般的にキム・レウォンのアイデアが入っていると話していた。
「衣装に関しては一着で最後までいくので、私はこの映画が善と悪の対決で善が勝つという話というよりは、堕落した男の姿を見せたかったので、白い制服が時間が経つにつれてボロボロになって破れて、血や汚れがついて、最後は雑巾のようになってしまう、そういったものを見せたかったんです。なので、最初から最後まで海軍の制服を脱がすことをしませんでした。キム・レウォンさんとは役についてたくさんのことを話し合いました。『ここではこういったセリフが合う』とか『ここではこういった動線が合う』など、アイデアをたくさん出してくれました。特定の場面でアイデアが入ったというよりは、全般的に彼のアイデアが入っていたと思います。だからアクションシーンも直接されましたし、カン・ドヨンというキャラクターはキム・レウォンさんでなければ上手く演じきれなかったと思います。本当に完璧に演じてくれました」。
本作は緊迫感あふれるアクションシーンだけでなく、テロ事件を追うことになった特ダネ記者のオ・デオを演じたチョン・サンフンが加わることで、コミカルなシーンも織り交ぜられている。本作でもファン・イノ監督らしい独自の演出力で観客を楽しませてくれる。そんな監督の次の作品も気になるところ。
「今回はとても重厚な作品でちょっと大変だったので(笑)、次はライトな感じのコメディとかロマンスとか、SFヒューマンドラマなど、子供たちが出てくるようなもっと楽しい作品を作ってみたいです」。
最後に監督は、日本の観客に「日本には何度が行ったことがあるのですが、行くたびに思うことは、街並みは韓国と近いものがあるのですが、まったく違う感じがするんです。なので、この映画が日本の観客の皆さんにどのように見えるのかとても気になります。楽しんでもらえたら本当にうれしいです。この映画はヒーローとして崇められた一人の男が堕落していく様が見どころだといえます。なので、善が悪に勝つ話ではありますが、その中でなぜ悪役があんなことをしたのか、なぜ悪役が主人公を制御不可能な状況に追い込んだのか、という観点から見ると楽しめる作品です。楽しんで見ていていただければと思います」とメッセージを伝えた。
『デシベル』
大都市に仕掛けられた“騒音反応型爆弾”。高IQ爆弾魔の標的は、元海軍副長。人質は釜山市民。連続爆弾テロ事件に隠された悲しい過去とはー。
STORY
大都市・釜山。ある一軒家で起こった爆破事件のニュースを目にした元海軍副長カン・ドヨンにかかってきた一本の電話。「次のターゲットは、サッカースタジアムだ。通報したり観客を避難させたら爆発する」。それはテロリストからの脅迫だった。仕掛けられたのは普通の爆弾とは違い、騒音が一定のデシベルを超えると制限時間が半減して爆発する特殊爆弾だ。ドヨンは事態を把握する間もなく、5万人の観衆で埋め尽くされた釜山アシアード競技場に向かうが…。
監督: ファン・イノ
出演:キム・レウォン、イ・ジョンソク、チョン・サンフン、パク・ビョンウン、チャウヌ(ASTRO)
イ・サンヒ、チョ・ダルファン、イ・ミンギ
2022|韓国|110分|シネスコ|5.1ch|原題:데시벨|英題:DECIBEL|字幕翻訳:福留友子|G
配給:クロックワークス
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公式HP:https://klockworx-asia.com/decibel/ X:@decibelmovie #デシベル
11月10日(金)新宿バルト9ほか全国公開