「個別インタビュー」俳優イ・ジフン 映画『アンダー・ユア・ベッド』 「日本で牛かつを食べながら日本のドラマに出演したいです(笑)」

5月31日(金)より全国公開される映画『アンダー・ユア・ベッド』で主演を務めた俳優イ・ジフンにインタビューを実施。原作は「殺人鬼を飼う女」「呪怨」など数々の話題作を世に送り出した大石圭の角川ホラー文庫処女作『アンダー・ユア・ベッド』(2001)。高良健吾主演で2019年に公開され、映画ファンの話題をかっさらった傑作が海を越え、 『蟹工船』(2009)や 『うさぎドロップ』(2011)、 『砕け散るところを見せてあげる』(2020)など、日本でも評価の高いSABU監督がメガホンをとった。

インタビューでは、映画に出演することになった経緯や撮影中のエピソードといった映画に関する質問のほか、日本の印象や日本のファンとやってみたいことなどについて語ってくれた。

2013年にドラマ「学校2013」(KBS2)でデビューしたイ・ジフン。以降、「六龍が飛ぶ」(2015-2016 SBS)、「魔女宝鑑~ホジュン、若き日の恋~」(2016 JTBC)など、さまざまなドラマで確かな演技力を披露し、注目を集め、2019年にはドラマ「新米史官ク・ヘリョン」(MBC)で、見目麗しい堅物の士官「ミン・ウウォン」役に扮し、MBC演技大賞水木ドラマ部門で助演賞を受賞。さらに、2023年7月に公開された初の長編主演作『隙のない関係(原題)』では、歌手を目指してオーディションに挑む「スンジン」役を完璧なまでに演じた。


爽やかな優しい笑顔が印象的な彼だが、本作では執着心が強い孤独なストーカー役を演じている。映画に出演することになった理由について、彼は「出演のオファーを受けたというより、シナリオを読むきっかけがあり、特別な内容のものだったので、原作を探して映画化されたものを観ました。特別なシナリオを自分も好きなSABU監督が演出されるということを聞いて、現場に行って演技してみたいという気持ちになりましたし、学びたいという気持ちもあったので悩むことなく出演したいと伝えました」と語った。

デビュー作でもジフンという役前だったが、本作の役名もジフン。これについて、彼は「役名については、偶然でした。名前が同じだったので、SABU監督とミーティングをしたときも運命だと言われました」と明かした。脚本家いわく、ジフンという名前は韓国で一番典型的でよくある名前ということで使ったそうだ。

映画のポスターでもわかるように、主人公のジフンがベッドの下に潜む姿は異様で恐怖心も感じる。イ・ジフンの魅力である爽やかさはどこにも感じない。役作りについては、SABU監督から「できるだけカッコよくしないように」というリクエストがあったそうだ。

「撮影に臨む前に、ジフンという人物について、彼がどうやって生きてきたのか考えながら役作りをしました。でも、現場に行ったときに僕が作り込んでいるようなことを監督が感じたようで、『何もしないで、感じるままに表現してくれればいい』とおっしゃられて集中できるような環境を作ってくださったので、そのおかげでジフンというキャラクターに没入して演じることができました。原作と差別化をすることは難しいことですが、なるべく原作に支障をきたさないように演技をしようと頑張りました。SABU監督を信じて演じました」。

本作で韓国映画に初挑戦したSABU監督だが、一緒に作業してみた感想を聞くと、「お父さんみたいでした」と笑顔を見せる。

「現場で撮影されるときは、とても厳しくてプロフェッショナルな方なのですが、カメラが回っていない、コーヒーを一緒に飲むような時間では、とても温かい雰囲気のお父さんやおじさんのような感じの方でした。また、監督だけの世界観や日本と韓国の文化の差を感じるようなものをたくさん学ぶことができました。あと、よく笑顔を見せてくれるんです。僕が心配したり、悩んでいたりしたときに相談すると、いつも笑顔で肩を叩いて『よくやってる』と励ましてくれるところも良かったです」。

お父さんのような監督とは、撮影現場で一緒に写真を撮ったりしたと、インタビュー中にもスマホを見せて監督とのツーショット写真を見せてくれた。

「映画を観ると、暗い雰囲気で登場人物もとげとげしい感じですが、撮影現場ではみんな楽しく撮影していました。雰囲気メーカーがいたというよりかは、シン・スハンさんもイ・ユヌさんも、監督もみんな明るい方だったので、モニタリングしていてもリハーサルをしていてもみんな笑っていました。写真もよく撮って、顔に特殊メイクをしたりして遊んでいました。撮影は京畿道の光州(クァンジュ)で撮影をしたのですが、撮影時期は雪もたくさん降るような冬の時期で、みんなで集まって外で食事をとることもあって、とても楽しかったです」。

映画を撮りながら自分の新しい一面も発見できたそうだ。彼は「この映画を撮影しながら新しく発見したことは、撮影現場では楽しく撮影しましたが、撮影を終えてから家に帰ったとき、ジフンという人物について考えてみたら感情がものすごく暗くなってしまい、憂鬱な気持ちになってしまいました。そんな感情になるのは初めてでした」と役に感情移入するほど没入していたことを話してくれた。

本作は暴力シーンや残忍なシーンが多いため、大変な撮影もあったそうだ。彼は「イェウンがいなくなり、探しに行く場面があるのですが、地面が凍って滑りやすくなっているところがありました。100メートルほど全速力で走らなければならなくて、感情的には転んでも別に良かったようなシーンだったのですが、転んでしまったら大けがをしそうだなと思ったので、転ばないように集中して走ろうとして、そこが大変でした。それから、最後の格闘するシーンでは、狭い空間での撮影だったので相手とのタイミングを合わせるのが大変でした。相手を強く殴ったり首を絞めたりしなければならないシーンは何度もリハーサルを重ねたのですが、とても大変なシーンでした」と振り返った。また、演じていて難しかったことについて、彼は「セリフを言うことより、内面を目で伝えなければならないことが難しかったです。今回の映画で改めて学んだ部分でもあります。この作品に限らず演技をするうえで、いつも思っていることではありますが、この映画に出演したことによって、より一層目の演技に対する難しさを感じ、言葉で表現するより目で感情を表現することへの難しさを改めて感じました」と語った。

大変だったことだけでなく、面白いエピソードについても話してくれた。

「面白かったエピソードは、ベッドシーンで僕がベッドの下に息をひそめて隠れているシーンがあるのですが、シン・スハンさんが集中して頑張って演じられていたので、ベッドを支える部分が壊れてしまったんです。あまりにも激しかったので、僕の背中のほうに壊れた木が落ちてきて、その時は少し驚いたのですが、幸いケガすることなく終えました。シン・スハンさんは筋肉もすごいですし、とても強力な俳優さんです(笑)」。

楽しく撮影をしたという映画が完成し、それを観たときを聞いてみると、「完成した映画を観たときは、最初は恥ずかしくてあまり見ることができませんでした。試写会でちゃんと観たのですが、ベッドシーンや暴力性のあるシーンもあって、その部分でちょっと心配していたのですが、そういった部分について僕の母は、もっと果敢にもっと見せれば良かったのにという反応でした(笑)。ただ、暴力的なシーンも多かったので、そういうところを見るのがツラいという人もいるので、その点は心配もありました」と話した。そして、これから映画を観る人たちに対して注目してほしいことを聞いてみると、「まず、日本で映画が公開されることになり、とても気分が良いですし、感謝しています。映画館で観ていただく時に、登場人物それぞれに置かれた環境や状況、感情について注意しながら見ていただければと思います。それぞれが、どうしてそんな風にしかできなかったのかという理由を探して考えながら見ていくと、より一層映画を楽しめると思います。観た後も、いろいろな考えにふけることもできる作品だと思います。友だちと一緒に観ていただければと思いますし、恋人同士で観ていただいても、正しい恋人の在り方について考えていただきたいです。家庭についての話でもあるので、家族と一緒に観ていただいても良いと思います」と、映画を通して目をそらさずにさまざまなことを感じて考えてほしいという強い思いを伝えた。

イ・ジフンが話すように、本作を見終わると、世の中にはいろいろな人がいて、いろいろな考えがあるものだと改めて考えさせられる。また、自分の人生に影響を与えてくれた人との思い出も頭をよぎる。そんな「印象深い人物」についてイ・ジフンに聞いてみると、デビュー作「学校2003」のイ・ミノン監督のことを話してくれた。

「26歳のときに初めて僕のことをキャスティングしてくれたKBSドラマ『学校2013』のイ・ミノン監督です。監督とお会いした時、僕の目を見つめてから、初恋の話をしろと言ってきました。その日、僕はオーディションを受けなければならないという気持ちで緊張していたのですが、監督はとても珍しい方法でオーディションをしてきたんです。そして、初恋の話を1時間半の間、好きになったところから付き合って、別れるまでにいたるまでの話をしました。そして、それをきっかけにチャンスをいただき、ドラマに出演することができました。なので、僕にとっての印象的な方は、イ・ミノン監督です」。

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2024.05.25