◆BTS が他のアイドルグループと一線を画す理由
彼らが今、これだけ多くの人々を夢中にさせている理由は、魅力的な歌とダンスだけではありません。他のアイドルグループと一線を画す彼らの魅力は、夢への挑戦と実現、よりよい世の中について考える視点、善き人になりたいと感じさせるメッセージ。これらを時にストレートに、時に詩人のように美しく伝える。それが、世界で熱狂を呼び起こしているのです。
BTSは哲学する音楽家といえるだろう。美しい音楽とダンスに心を奪われた人たちは、自分の部屋で深く考え、詩を咀嚼し、気づきを得る。音楽を聴くたびに、そんな特別な「思惟の時間」を与えるのだ。(「本文」より)
BTSの音楽を聴いた人たちは、こんなふうに証言します。
「BTSがわたしの人生を変えました」
「絶望のどん底で誰にも慰めてもらえなかったとき、BTSの音楽を聴いて耐えました」
「目を背けてきた自分の姿をしっかり見つめ、愛すべきだと感じました」
「夢をあきらめるな、負けてもいい。そう言ってくれたことに感謝します」
「歌が癒やしになると初めて気づきました。多くの人がBTSを知り、心が和みますように」
「BTSのおかげで善き人になれました。ありがとう」
「夢をあきらめるなという歌詞は何度も聞いたことがあるけれど、こんなに心に響いたのは初めてです」
本書では、コロナ禍という混沌と不安の真っただ中にいるわたしたちにポジティブな影響を与え、自己肯定感を高めてくれるBTSのパワフルなメッセージと哲学を、美術学博士号をもつ作家・チャ・ミンジュ氏が考察。
彼らの思想にもっとも近いと考えられるニーチェ、ヘーゲル、ハイデッガーなどのさまざまな哲学者の思想とBTSの言葉を結びつけながら、わたしたちが直面する社会的問題をふまえ、彼らの音楽が世界中で共感を生む理由を探っていきます。デビュー当時からBTSを応援し続けている人も、最近ファンになった人も、彼らへの理解がより深まる一冊となっています。
哲学者の理念について丁寧な解説も入っているので、初めて哲学に触れる人の入門書としてもおすすめです。
翻訳は、多くの媒体に韓国エンターテインメント関連記事を寄稿し、『BTSを読む』『BTSとARMY』など数々のBTS関連本に携わってきた桑畑優香氏が担当しています。
◆哲学者の思想から読み解く、BTSのメッセージ
2018 年にBTSのリーダー・RMが国連総会で行ったスピーチのテーマでもあり、BTS のもっともよく知られたメッセージといえる「自分を愛すること」。
実はこのスピーチの前から、BTSは「自分を愛する」というメッセージを歌にのせて発信し続けていました。それをいち早く心に留めていた著者は、ニーチェの言葉をひきながら、「Reflection」に込められた哲学を読み解いています(59ページ)。