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-では、もう一人の主人公を演じたオ・ダルスさんも、前作「7番房の奇跡」に続いての出演となりますが、起用理由を教えてください。
「7番房の奇跡」では組織暴力団員の役でしたが、これまでオ・ダルスさんはコメディや軽い役、誰かを裏切ったり、詐欺師だったり、そういう役が多く、それも悪くはないんですが、新しい姿を見せられる役があったらいいなと考えていました。それで、大統領役もやってみる価値があるのではないかと。他の人が考えもしなかった、監督ならではの意地と言いますか、絶対やってほしい、きっと新しい姿を見せてくれるだろうという強い気持ちがありました。オ・ダルスさんなら、きっとこの役を上手くこなしてくれるだろうという信頼もありましたし、周りにも話したところ、私の考えを支持してくださる方が多かったので、最終的にイ・ウィシク役をお願いすることになりました。
-撮影で印象に残っていることは?
オ・ダルスさんとの面白いエピソードなんですが、オ・ダルスさんはマッコリが大好きで、撮影中は毎日、一日も欠かさず飲んでいました。他の俳優たちも交え、一緒に飲みながら、その日の反省や明日の撮影をどうするかという話をよくしていました。制作会社の代表とも、一日も欠かさず飲みながら語り合っていた姿が記憶に残っています。そんな撮影現場でしたので、お酒の席での楽しい姿も映画の中に溶け込んでいると思います。オ・ダルスさん自身がとても面白い方ですので、シリアスな演技であるにもかかわらず、思わず笑ってしまって、笑いをこらえることもよくありました。それくらい楽しい演技をたくさん見せてくださったんですが、シリアスな役でしたので、面白さを少し押さえるようにしました。
-「7番房の奇跡」もそうでしたが、今作「偽りの隣人」でも劇中の登場人物の名前が監督の家族や知人の名前だそうですが。
そうですね。「7番房の奇跡」のイェスンは私の娘の名前でして、リュ・スンリョンさんが演じたヨングは親友の名前でした。今回の「偽りの隣人」ではイ・ウィシク(オ・ダルス)は私の父の名前で、イ・ウィシクの妻ク・ヨンジャ(キム・ソンギョン)は母の名前、イ・ウィシクの息子イェジュンは私の2番目の息子の名前になります。それから、ユ・デグォン(チョン・ウ)は子供の頃からの親友の名前です。
-そのように周りの方を登場人物の役名にする理由というのは?
シナリオやキャラクターを考えるとき、名前を付けるのが本当に毎回大変だからです。なので、自分にとって気楽な人たち、それから私の頭の中でよく動いてくれそうな人たちの名前をよく使うんですが、その中でも、家族の物語が多いので、自分の家族の名前を使うというわけです。韓国のインタビューで記者の方に、「家族の皆さん、さぞかし喜ぶでしょうね」と言われたんですが、実際のところ家族たちはあまり喜んでいません(笑)。とはいえ、私は無理やりにでも使うと言いました。そうすることで、いい作品が生まれるからと。自分の一番近くにいる家族にとって癒しになる、楽しく見られる映画になってこそ、たくさんの観客の方とも通じ合うことができると信じているので、家族の名を懸けて、いい映画を作ろうという思いで、周りの名前を使うようになりました。今回は唯一、父だけが大統領の名前に使ったので、私も気分が良かったんですが、父も感謝していると言ってくれました(笑)。
-今作で家族の名前をほとんど使われたと思いますが、今後はどうされるんでしょうか?
そうなんです、それでいま悩んでいるところなんです(笑)。今度は妻側の家族たちの名前を借りようかなと思っています。
-劇中、食事シーンもたびたび登場しますが、何か意図があってのことでしょうか?
この映画は政治家を監視する盗聴要員たちの物語なので、おぞましく怖い、政治的な物語としてもっと踏み込める物語ではありました。ただ、そう見せたくない気持ちが強く、人間の基本的な欲求であるおいしいものを食べたり、排泄したり、という姿から感じられる人の情をナチュラルに見せたいと思い、食事のシーンをふんだんに入れました。食事だけでなく、トイレのシーンも何度か出てきますが、人間の本来の姿を2人の主人公を通して見せたいと思いました。
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