イ・ファンギョン監督
-1985年当時を再現するにあたって、大変だったことなどはありますか?
当時、私は中学生でしたが、そのとき流行っていた音楽や美術など、そういうものには特に気を遣いました。中でも、劇中で「クルクル」という歌をそのまま使いましたが、当時は禁止曲でした。理由はクルクル回って人を惑わしているからだと聞きました。当時も理解できませんでしたが、今考えてもなおさら理解できない、アイロニーで、ある意味コメディとも思える笑えるような話でもあったと思います。そういう事例が1985年頃にはたくさんあり、当時を思い出すと、楽しい思い出もありますが、息苦しいようなもどかしい気持ちにもなります。そして、当時は気付きませんでしたが、今振り返ってみると、“あの頃こういうことがあったから、あんな風に抑圧されていて、もどかしかったんだな”と理解できるような気がしました。観客の皆さんにも、“あの頃はこういうことがあったなぁ”と思い出を覗き込んでほしいと思いました。
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-主人公を演じた俳優チョン・ウさんとは、2004年のソン・スンホンさん主演「あいつはカッコよかった」以来、2度目のタッグとなりますが、チョン・ウさんをキャスティングされた理由を教えてください。
チョン・ウさんは「あいつはカッコよかった」のオーディションで私が見出し、デビューとなりましたが、会ったとき、“いや~、本当に面白い俳優だな”、“一般的な俳優ではないな”と思うくらい猪突猛進的なところがあり、アイディアが豊富でした。なので、新人ではありましたが、助演クラスの大きな役をお任せしました。その後もチョン・ウさんとはたくさん話を交わし、仲良くなっていき、一緒にご飯を食べたりお酒を飲んだりして過ごしていましたが、その間もチョン・ウさんに合う役、適役はないだろうかとずっと考えていました。それで今回の「偽りの隣人」を構想する中で、チョン・ウさんと話をしながら、主人公が彼にぴったり合うのではないかと思いました。
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-監督から見たチョン・ウさんの俳優としての魅力というと?
スポンジとでも言いましょうか。例えば、赤い絵の具を垂らしたら、すぐ赤く染まるし、黄色い絵の具を垂らしたらすぐ黄色く染まるような本当に吸収力のあるスポンジのような俳優です。そして、一つ投げかけると、すぐにフィードバックをしてくれるし、すぐに感情に入り込んで、難易度の高い演技も見事にこなしてくれるステキな俳優だと思います。
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