あこがれの地
光海君が船に乗せられたとき、極秘扱いで行き先は告げられていなかった。船の周囲に幕を張り、方向をわからないようにしてあったのだ。
島に着いたとき、光海君は自分が済州島に送られたことを知った。
絶望的に嘆き悲しむ光海君。
島の役人になぐさめられても、涙は止まらなかった。
しかし、時間が解決してくれた。「住めば都」とよく言ったもので、光海君は次第に済州島の暮らしになじんでいった。
没したのは1641年で66歳だった。当時としては長寿であった。済州島の水がよく合ったのかもしれない。
そんな済州島は現代ではすっかり評価が変わり、人気リゾートになった。
今は、かつて流刑地だった面影はまったくない。
それどころか、韓国の人が一番行きたい「あこがれの地」なのである。
コロナが終息すれば、真っ先に済州島に行きたいと思っている人も、さぞかし多いことだろう。
文=康熙奉(カン・ヒボン)