「コラム」連載 康熙奉(カン・ヒボン)のオンジェナ韓流Vol.118「ヒョンビンの生き方」

信憑性のある演技

ヒョンビンがこう語る。
「同じ年頃の人たちと一緒に楽しめないことが多いのが残念です。あるとき、若者が多く集まる繁華街で撮影したことがあります。帽子やアクセサリーを売っている屋台などを見ながら、急にブラブラと歩きたくなりました。悩んだ後、車から降りて歩いてみましたが、誰も私を気にしていないのに、まるで裸で歩いているような気がしました。道を歩くにも勇気が必要だということを知りました」
ヒョンビンには、街中で自由に行動ができない、という人気スターの宿命がある。そのことで寂しい思いをすることはあるだろうが、彼はその「不自由さ」の中で自分なりの生き方を模索してきた。
実際、俳優として名声を得てきたことも確かだが、同時に失ったものも多い。特に、私生活は我慢の連続だった。
しかし、その我慢の連鎖の中で、ヒョンビンは自分なりの哲学を身に着けてきた。それは、生活のすべての出来事が俳優の表現力につながるということだ。

今や絶大の人気を得ている『愛の不時着』を見ていても、ヒョンビンは想像できない設定(北朝鮮の将校の役)の中で、信憑性のある演技を披露し続けた。
そうした姿を見ていると素直に思う。
「ヒョンビンという俳優の真骨頂が作品に現れている」
『愛の不時着』を繰り返し見ていても、そのことを実感できる。
次回作が一番期待される俳優‥‥間違いなく、ヒョンビンはそんな俳優になっている。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

2020.06.27