「コラム」連載 康熙奉(カン・ヒボン)のオンジェナ韓流Vol.111 「『極限職業』の面白さ」

ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』が、今年のアカデミー賞で主要な4部門を獲得するという快挙を成し遂げた。日本でも、その効果で興行成績が1位になるという結果になった。韓国映画の面白さを知った人にぜひ勧めたいのが『極限職業』(邦題「エクストリーム・ジョブ」)である。

ドジな麻薬捜査班

韓国で昨年公開された『極限職業』は、観客動員数が1600万人を越えた。これまでの韓国映画の中でも、史上第2位に相当する集客力である。
実際、韓国映画で観客1000万人を突破した映画が今までに19本あるのだが、その中でも極めつきのメガヒットになったのが『極限職業』というわけだ。
この映画はなぜこれほど人気を得たのか。
とにかく、腹の底から笑える映画である。韓国の人たちはコメディー映画が大好きだが、この映画は特別にユーモア精神に溢れている。
メインのストーリーはこうなっている。
5人でチームを組んでいる麻薬捜査班。ドジばかり踏んでいて、ついに解散の危機に陥ってしまう。
その中で、麻薬の大物を逮捕する機会に恵まれた。
起死回生のチャンスだと気負ってアジトを張り込むのだが、おかしな成り行きからアジトの前のチキン屋を引き継ぐことになった。
そのほうが張り込みも怪しまれないでいいだろう、ということだった。

笑える格闘シーン

予想外のことが起きた。本業を差し置いてチキン屋が大繁盛してしまい、連日たくさんのお客さんが入ってくるのだ。値上げしても客足が落ちないほどで、そのあたりのドタバタぶりが大いに笑える。
やがて、そのチキン屋が麻薬組織に利用されて、さらにどんでん返しが待っているのだが、後半は格闘シーンが多くハラハラドキドキが続く。
そんな格闘シーンにも笑いが起きるほどのギャグがあり、なおかつダメ刑事と思われていた5人が、実はそうではなかったということがどんどん明らかになってくる。
あの『パラサイト』の場合は格差社会を痛烈に描いているだけに、見た後に複雑な感情が残る人もいるだろう。
しかし、この『極限職業』の場合は、文句なしに見終わった後も笑顔が絶えない。実に幸せな気分にひたれる。
韓国で観客動員数が1600万人を越えたという理由は、実際に見れば、たちどころにわかる。
ぜひ、『極限職業』で韓国映画の真髄に触れてください。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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  • 2020.02.23