完売店続出、刊行1カ月で5万部突破! 話題の小説『82年生まれ、キム・ジヨン』著者、緊急来日決定  芥川賞作家・川上未映子氏との特別対談も

 

■著者からのメッセージ

日本の読者の皆さんへ

この小説を書きはじめた2015年、韓国では多くの事件がありました。道徳観念のない女性たちが、MERS(中東呼吸器症候群)にかかっているのに隔離を拒否したという噂が流れました。もちろん事実ではありません。女性をばかにする暴力的な言葉を使ったお笑い芸人が番組を降板しました。母親を虫にたとえる「ママ虫」という造語が生まれました。韓国最大のポルノサイトにおいて、盗撮やレイプの共謀などの話題が公然とやりとりされていたことが明らかになりました。

私は、誰も女性だからという理由で卑下や暴力の対象になってはならないと考えてきました。女性たちの人生が歪んだ形で陳列され、好き勝手に消費されていると感じました。女として生きること。それにともなう挫折、疲労、恐怖感。とても平凡でよくあることだけれど、本来は、それらを当然のことのように受け入れてしまってはいけないのです。そういう物語を書きたいと思い、そこから『82年生まれ、キム・ジヨン』という小説は始まりました。

この小説はありがたいことに韓国で多くの読者に出会うことができました。そして、読者イベントやお手紙、ブックレビューを通して読者自身の話を聞かせてもらうこともできました。キム・ジヨン氏より年上の女性たちも、若い女性たちも、この小説はまるで自分の話のようだと言っています。共通する経験、そのときには気づかなかった感情、似ているようで違っているそれぞれの選択……おかげで女性たちの多様な物語が世の中に現れ、大きな意味を持って受け入れられました。

女性たちをとりまく世界は変わりつつあります。Me too運動はハーヴェイ・ワインスタインをはじめ、性犯罪を犯した政界・文化界の大物たちを追い出しました。アイルランドは国民投票によって、妊娠十二週までは制限なく妊娠中絶を許容しました。賃金公開制度を実施する国家が増えています。韓国の女性たちもまた、メディアによる性の商品化を指弾し、家父長的な慣習に叛旗を翻し、自分が経験した性暴力を暴露して厳重な処罰を要求しています。

日本の読者の方々にとっても『82年生まれ、キム・ジヨン』が、自分をとりまく社会の構造や慣習を振り返り、声を上げるきっかけになってくれればと願っています。あなたの声を待っています。

2018年秋

■訳者あとがきより

『82年生まれ、キム・ジヨン』は変わった小説だ。一人の患者のカルテという形で展開された、一冊まるごと問題提起の書である。カルテではあるが、処方箋はない。そのことがかえって、読者に強く思考を促す。 小説らしくない小説だともいえる。文芸とジャーナリズムの両方に足をつけている点が特徴だ。きわめてリーダブルな文体、等身大のヒロイン、ごく身近なエピソード。統計数値や歴史的背景の説明が挿入されて副読本のようでもある。

(6ページに続く)

2019.01.22