「コラム」康熙奉(カン・ヒボン)のオンジェナ韓流Vol.257「何度でも見たい『別れる決心』」

韓国映画界でパク・チャヌク監督の名声には特別な響きがある。そんな巨匠の最新作が『別れる決心』で、日本でも2月17日から公開された。なんといっても、カンヌ国際映画祭で監督賞を獲得した傑作である。

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息もつかせない展開

パク・チャヌク監督は、今までに『JSA』『オールド・ボーイ』『渇き』『お嬢さん』といった話題作を生みだしてきたが、 6 年ぶりに発表した最新作『別れる決心』も大変な意欲作である。
主演を演じているのがパク・ヘイルとタン・ウェイだ。
パク・ヘイルは、ポン・ジュノ監督の出世作『殺人の追憶』で印象的な容疑者を演じて注目され、以後も韓国映画に欠かせない主役俳優となっている。
ヒロインを演じるタン・ウェイは、アン・リー監督作品の『ラスト、コーション』で国際的な女優としての存在感を見せ、以後もハリウッドに進出して活躍している。
以上の2人が、刑事と容疑者の関係から不思議な恋愛感情に陥っていく役に扮している。そこが『別れる決心』のゾクゾクするような見どころだ。息もつかせない展開、とはまさにこの映画のことかもしれない。


新しい発見

ストーリーを見てみよう。
熟練の刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、崖から転落死した男の事件性を調べている。その際に容疑の目を向けられたのが妻のソレ(タン・ウェイ)であった。
調べれば調べるほど謎めいた事故であった。そうした中でヘジュンはソレの態度の変化を微妙に察知し、魅惑的な彼女に徐々に惹かれていく。その中で刑事と容疑者の「危うい男女の情感」が交差する。果たして、ソレは夫を殺した犯人なのだろうか……。
こうして最後まで物語が巧みに練られていく。
『別れる決心』は、一度見ただけでは全体像を完璧に把握できないかもしれない。各場面に込められた情報量がきわめて多いのだ。
それゆえ、もう一度見たくなる。そして、最初に見たときに気づかなかった心理描写やセリフの意味がわかってくる。そういう意味で、見る度に新しい発見があるのが『別れる決心』の奥深いところなのである。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

2023.03.11