【MOVIE+】オ・ジョンセが生んだ“チェ・ソンゴンシンドローム”…「ワイルド・シング」で観客が育てた架空のスター(動画あり)

映画の主人公でもない。物語の中心人物でもない。それでも今、韓国の映画ファンやSNSユーザーたちの間で最も熱い視線を集めている人物の一人がいる。映画「ワイルド・シング」でオ・ジョンセが演じた架空のバラード歌手、チェ・ソンゴンだ。

SNSでは、「チェ・ソンゴンにハマる」という意味の造語“ゴンミョドゥルダ”まで生まれた。ファンは自らを“ゴンデュ”(チェ・ソンゴンのファンを指す愛称)と名乗り、劇中歌「君が好き」のチャレンジ動画を投稿する。さらには音源チャート進出、ミュージックビデオ制作、芸能人たちのチャレンジ参加まで続き、一つの“チェ・ソンゴンシンドローム”とも呼べる広がりを見せている。

なぜ一人の架空キャラクターが、ここまで大きな人気を獲得したのだろうか。



■「万年2位」が生んだ不思議な共感

チェ・ソンゴンは劇中で、混成ダンスグループ「トライアングル」とライバル関係にあるバラード歌手として登場する。しかし彼は、いわゆる成功者ではない。

歌唱力もあり、努力も惜しまない。それでも音楽番組では1位に届かず、ついには「39週連続2位」という前代未聞の記録を持つ“万年2位”の歌手として描かれる。

本来なら笑いを誘うための設定だ。しかし観客たちは、その姿に強く感情移入した。

才能もある。努力もしている。それでもなぜか頂点には届かない。誰もが人生のどこかで経験したことのある悔しさや切なさが、チェ・ソンゴンという人物には凝縮されていた。

長髪に白いシャツ、甘い歌声という昔ながらのバラード歌手らしいビジュアルも相まって、どこか懐かしく、放っておけない存在になった。笑えるのに応援したくなる。その絶妙な距離感こそが、チェ・ソンゴン最大の魅力だった。

■「君が好き」が映画を飛び出した

チェ・ソンゴン人気の中心にあるのが、劇中歌「君が好き」だ。

恋する男性が愛する人へ思いを伝える王道バラードだが、一度聴くと頭から離れない中毒性を持っている。観客からは「気付けば口ずさんでいる」「ずっと脳内再生される」といった反応が相次いだ。

配給会社ロッテエンターテインメントも、「チェ・ソンゴンというキャラクターと『君が好き』の強烈なフックに、観客が予想以上の反応を見せている」と明かしている。

その人気は数字にも表れた。「君が好き」は韓国最大級の音楽配信サービスMelonのHOT100チャートにランクイン。劇中でライバルだった「トライアングル」の楽曲を上回る順位を記録し、“万年2位”だったチェ・ソンゴンが現実世界では逆転を果たすという皮肉な結果まで生まれた。

映画の中の架空歌手が現実の音源チャートで存在感を示す――。それだけでも極めて異例の出来事だった。

映画「ワイルド・シング」チェ・ソンゴン『君が好き』ミュージックビデオ


■オ・ジョンセだから成立したキャラクター

もちろん、この現象は楽曲の力だけでは説明できない。

チェ・ソンゴンという人物を本物の歌手のように成立させた最大の功労者は、オ・ジョンセだ。

ロッテエンターテインメントは今回の反響について、「オ・ジョンセならではの独創的なキャラクター表現力と、『君が好き』が持つ中毒性を信じていたが、実際に音源チャート進出まで実現したのは予想を超える結果だった」と評価している。

さらに「君が好き」のミュージックビデオを演出したイ・ウォンソク監督は、撮影時のエピソードとして「オ・ジョンセは毎テイク、本当に涙を流しながら歌っていた」と明かした。

涙を演出するための特殊な道具は使っていない。ただひたすら感情を込め、切実に歌い続けたという。

監督は「撮影が進むにつれ、悲しみを超えた狂気さえ感じた」と振り返っている。

笑わせるためのキャラクターでありながら、演じる本人は誰よりも真剣だった。その真剣さが観客の心を動かし、単なるギャグキャラクターでは終わらない魅力につながった。

■映画の外で育った“チェ・ソンゴンワールド”

人気は映画館の中だけにとどまらなかった。

映画公開後、「君が好き」のミュージックビデオが制作され、再生回数は260万回を突破。さらにSNSでは“君が好きチャレンジ”が拡散し、俳優のリュ・スンリョンをはじめ、「鉄槌教師」のイ・ソンミン、キム・ムヨル、チン・ギジュ、P.O(ピオ)らが参加した。

さらに「aespa」のウィンター、「MONSTA X」のキヒョン、「SUPER JUNIOR」のキュヒョン、歌手のBada、シェフのチェ・ガンロク、野球選手のクァク・ビンまで加わり、ジャンルを超えた広がりを見せた。

所属事務所も“チェ・ソンゴンのファン目線”というユニークな設定でSNSコンテンツを展開し続けた。その結果、観客はオ・ジョンセという俳優を見ているのではなく、本当に存在する歌手チェ・ソンゴンを応援しているような感覚を楽しむようになった。

■観客が生み出したスター

近年、韓国コンテンツ界では作品の人気を超え、キャラクターそのものが独立した生命力を持つケースが増えている。

ただ、チェ・ソンゴン現象はその中でも特異な例だ。

ドラマの主人公でもない。映画の中心人物でもない。それでも観客たちは自らミームを作り、チャレンジ動画を投稿し、SNSで語り合いながらキャラクターを育てた。

かつて観客は作品を鑑賞して終わりだった。しかし今は違う。魅力的なキャラクターを見つけると、自ら世界観を拡張し、新たな物語を生み出していく。

チェ・ソンゴンは、そうした時代の象徴とも言える存在になった。

劇中では「39週連続2位」という不名誉な記録に終わったチェ・ソンゴン。しかし現実では、多くの観客に愛されるスターへと成長した。

映画の中で果たせなかった“逆転”を、現実世界で成し遂げたのである。

「ワイルド・シング」が生んだ最大の成功は興行成績だけではない。観客たちが自ら愛し、育て、映画の外へ連れ出したチェ・ソンゴンというキャラクターそのものだった。

そして、それこそが今、韓国の映画界を席巻する“チェ・ソンゴンシンドローム”の正体なのかもしれない。

WOW!Korea提供

関連記事

2026.06.21