船尾のベンチに座って漠然と後ろの海を見ていたときのこと。灰色のハンチングをかぶり白い靴を履いた70代の男性が横に座り、「先生様」と渋い声で呼びかけてきた。年上の大先輩から「先生様」と言われて恐縮した。 莞島港の風景 済州島の金柑 年上の大先輩は、私が手に持っていた済州島の地図を見たかったようだ。もち…
中国大陸で589年に隋が統一を果たすと、高句麗(コグリョ)は身が凍るほどの脅威を感じた。それまで高句麗は日本と関係を保っていなかった。しかし、隋の攻撃を受け始めると、「西から侵攻を受けるなら、東の国と連携しよう」という気持ちに傾き、日本との外交に乗り出した。 写真=植村誠 慧慈と聖徳太子 高句麗が日…
韓国に行きたいと願っている人に最適なガイド&エッセイが誕生した。それが『韓国ひとめぼれ感動旅 韓流ロケ地&ご当地グルメ紀行』だ。本書では、韓国旅行の魅力を様々に取り上げている。 『韓国ひとめぼれ感動旅 韓流ロケ地&ご当地グルメ紀行』(著者/小暮真琴・康熙奉) 本格的な韓国旅行エッセイガイド 双葉社か…
東京の浅草寺の本尊は観世音菩薩だが、隅田川から引き上げられたという縁起(由来)がある。その由来には、いったいどんな要点があるのだろうか。 川の中から出てきた仏像 その昔、隅田川で檜前(ひのくま)浜成(はまなり)、竹成(たけなり)の兄弟が漁をして生活していた。 628年3月18日、この日はいくら漁に精…
韓国・南西岸への旅3「船旅はとてもいい」 船の中で、安らげる居場所を求めて大部屋の間をウロチョロした。すでに客室では、あちこちで花札が始まっていた。各人が目の前に紙幣を積んでいる雰囲気はまるで賭場のようであり、紙幣も千ウォン札より1万ウォン札が目についた。誰もが旅行気分に浮かれている。 デッキで質問…
出航前の船上デッキ そもそも韓国ではインスタントコーヒーを「こんなに砂糖を入れてどうするんだ」というくらい甘くして飲む人が多い。それにしても、その男は極端だった。あれでは砂糖入りコーヒーではなく、コーヒー入り砂糖湯である。甘いものがよほど好きなのだろうが、そのわりに痩せ型だった。趣味は…
飛鳥寺に今も残る大仏が日本で最古の仏像の1つとされているが、他にも「最古では?」と目される仏像がある。それが善光寺の本尊の「一光三尊阿弥陀如来像」。ただし、絶対秘仏で見ることはできない。 「お戒壇めぐり」 善光寺を訪ねてみる。 現在の善光寺の本堂は1707年に建てられている。間口24メ…
物部氏が滅び、蘇我馬子(そがのうまこ)には、もう誰も逆らえなくなった。たとえ、天皇でさえも……。ただし、用明天皇の後を継いだ崇峻天皇は少なからず蘇我馬子に反感を持っていた。たまたま、猪を献上した者がいた。その猪を見ながら、崇峻天皇は、「猪の頸を斬るように、憎い人間を斬ってみたいものだ」と口走った。 …
済州港の旅客ターミナルの風景 済州(チェジュ)港の旅客ターミナルは、早朝だったこともあって人もまばらだった。午前7時50分発の船なので、まだ50分ほど時間があった。食事をしようと思い、三つ並んだ食堂の中で一番無難な店に入った。 謎の警官 店を選ぶ目安は客の数。他の二つの店…
百済(ペクチェ)の聖王(ソンワン)の使者が来日して、欽明天皇に釈迦仏の金銅像と経論などを贈呈した。仏教の受容をめぐって、政権を支える2大勢力が対立した。 捨てられた仏像 欽明天皇は蘇我氏と物部氏の間をとりもちながらも、やや蘇我氏寄りの判断をした。 「稲目に授けるゆえ、試しに拝んでみたら…