「コラム」日韓の二千年の歴史1/海を渡る人々

 

足りないものを補った
日本では、3世紀から4世紀にかけて近畿に強い政治勢力があった。
それは今では「ヤマト政権」と呼称されている。
そのヤマト政権は鉄を使うことで自らの勢力を拡大していった。しかし、当時の日本では鉄製品をつくりだす技術がなかった。
ならば、どこから鉄を手に入れていたか。

頼ったのが伽耶だった。
伽耶の中心地域と目される洛東江の下流域では、近年になって発掘調査が急ピッチで進んだ。
その結果、伽耶では豊富に鉄製品がつくられていたことが立証された。
先進の製鉄技術を持っていた伽耶だが、中央集権体制を築くには至らず、部族の連合体のような政治形態を取っていた。

高句麗がしきりに南下してきて伽耶は強い圧迫を受けた。
伽耶は、鉄の鎧や兜など強固な武具を持っていた。
しかし、人手だけが足りなかった。
つまり、鉄の鎧や兜はあっても、それを使う人が不足していたのだ。そこで頼ったのが日本だった。
こうして、ヤマト政権と伽耶はお互いに足りないものを補いあった。ヤマト政権は鉄を、伽耶は人手を……。

日本から伽耶に向かった人々は兵力となって高句麗と戦った。
ヤマト政権にとっても、伽耶が高句麗に滅ぼされると死活問題だった。鉄を失うことになるからだ。
それを防ぐためにも、日本から伽耶に行った人々も必死に戦ったことだろう。
(次回に続く)

文=康 熙奉(カン ヒボン)

コラム提供:ロコレ
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康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。

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2019.01.09