夫を叱咤激励
申師任堂の夫は李元秀(イ・ウォンス)という。
「科挙に合格するまで絶対に帰ってこない」
そう決意して李元秀が都に旅立ったことがあった。しかし、舌の根も乾かないうちに挫折して戻ってきてしまった。
情けない夫を前に、申師任堂は裁縫箱からハサミを取り出した。
「あなたが約束を守れないと言うなら、この世に未練はありません」
そう言って、ハサミで自らの命を断とうとした。驚いた李元秀は、まず妻に詫び、自らの甘さを恥じた。
そして、改めて決意を固めて都に飛び出していき、今度こそ科挙に合格するまで帰ってこなかった。
本来なら、好きな芸術をとことん究めたかったはずなのに、申師任堂は自分の欲を抑えて、親孝行と内助と教育に人生を捧げた。(ページ3に続く)