-イ・ビョンホンさんとは、カットごとに納得いくまで意見を交わしたそうですが、カン・ジェフンというキャラクターを作っていくうえで、こだわったのはどういう部分でしょうか?
この作品は、カン・ジェフンが家族の回りをグルグル回る物語なんですが、そういうことを長編映画にするには、どうして彼は家族に近づけないのか、ということをしっかり描かないと説得力がないと思いました。だから、主人公のジェフンの視点に頼って撮らなければいけないし、ジェフンは見たいものだけを見て、考えたいことだけを考えて動き回った結果、あることに気付くので、彼が見せる日常の些細な行動に、観客が信じてついていけるようにしないといけない、という部分が私にとっては難しいところでした。
でも、イ・ビョンホンさんがその微妙な差を上手く演じ分けてくれたんです。そういう点で、ほかの映画と差別化されているんじゃないかと思います。例えば歩くシーンが多いんですが、こちらとしては、何度か歩いてもらって、それをつなげばいいと考えていたんです。ところが、イ・ビョンホンさんは毎回違う歩き方をしたんです。演技が達者だということは知っていましたが、それを自分の目で確認するたびに、シナリオが持っている蓋然性をイ・ビョンホンさんが完成させてくれたと思いました。
-そして、コン・ヒョジンさんはドラマで“ラブコメクイーン”と呼ばれ、そのイメージが強いですが、本作では心の奥底で葛藤する妻スジンを好演していますね。
たしかに、そういうイメージが強いですが、彼女もある程度年齢を重ね、スジンのように、人生で悲しいこともたくさん経験してきたそうなんです。だから、シナリオに対して誰よりも共感してくれたし、自分からやりたいと言ってくれたんです。
ただ、コン・ヒョジンさんは自分が主導していくような女性像を演じたいという思いが強い方なので、夫が主人公で、その妻役だとすると、妻は受身の役だから、あまりやりたがらないんですが、今回はシナリオを気に入って、出演を決めてくれたようです。イ・ビョンホンさんにしても、コン・ヒョジンさんにしても、私が思っていた以上に積極的に関心を持ってくれたので、そういう2人に恵まれて幸運でした。
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