-イ・チャンドン監督との作業はいかがでしたか?
シナリオ完成までをご一緒させていただいたんですが、私が初期に書いていたものは、学校の暴力やいじめを扱ってはいたんですが、ジャンル的な要素も入っていたり、映画的な仕掛けがあったり、大人の物語と思えるようなものでした。それを(イ・チャンドン)先生は見抜いたようで、「偽物ではないか?」と指摘されました。それで、半年以上、2週に1回ぐらい、シナリオのことで先生とお会いしたんですが、新しいものを書いて持っていっても、批判されて突き返される、という繰り返しだったので、もうダメだと思って、本物とは何かを私なりに考えた末、自分の話を書くことにしました。そしたら、先生からも、同期の監督からも「本物っぽいね」と言ってもらえたんです。撮影している間も、先生がずっとそのことを耳でささやいているような感じがしました(笑)。私にとっては大きな問い掛けでしたね。
-完成した作品を見て、イ・チャンドン監督は何とおっしゃっていましたか?
初めての試写会のとき、わざわざ来てくださり、私は緊張のあまり、目も合わせられず、違う方向を見ながら、あいさつをしたのをいまでも覚えています(笑)。先生は弟子たちのことをなかなか褒めない方で、「この程度ならいいよ」「やってみたら」という言葉が、褒め言葉にあたるぐらいなんです。でも、「わたしたち」を初めてご覧になった後、「お疲れさま。君の映画だね」と。私にとっては、聞きたい言葉であったし、それが大きな褒め言葉のように思いました。メールでも「上手く仕上がったね。みんなが好きになるような映画でうれしい。映画館の中は静かだったけれど、熱く愛される映画になりそうだ」とおっしゃってくださり、本当にうれしかったです。
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