「合同インタビュー」名匠イ・チャンドンが認める新鋭ユン・ガウン監督、少女たちの成長物語を描く「わたしたち」の撮影秘話を語る!


-撮影をしながら、子役俳優のリアクションを大事にされたそうですが、子供たちの演技で驚かされたことや、ユン監督が想像していたものとは違うリアクションがあったシーンなどを教えてください。
想像していたものと違うリアクションだったということで言えば、ジアがソンからもらったミサンガブレスレットをソンの目の前で、腕から外すシーンですね。最初に書いていたシナリオでは、リハーサルを始めたら、子供たちにとっては暴力的に感じたようで、10回、20回と何回やっても、演じながら泣き出してしまい、演技の終着点がなくなってしまったので、シナリオを修正しました。他にも、こちらとしては意図していないんですが、子供たちが暴力的だと感じたときは、修正して別の描き方をするよう工夫しました。
それから、演技で驚かされた例としては、ソンが教室の黒板に「ソンのパパはアルコール依存症」と書かれているのを見つけ、それを消すシーンですね。途中で切って撮ると、感情を上手く作れないと思って、ロングテイクで撮ったんですが、スインは役にのめり込んでいたので、黒板を消した後も、呼吸が激しくて、止まらなかったんです。目も揺れているし。「カット」と言っても、その状態が続いていたので、衝撃的でした。エネルギーを使い果たしてしまい、めまいのような症状が出たようです。そんな感じで毎日が驚きの連続でした。



-劇中、爪をホウセンカで染めるシーンと、マニキュアで塗るシーンの対比が印象的でした。意図して盛り込んだのでしょうか?
私はシナリオを書くとき、何かに意味を持たせたり、象徴的なものを取り入れたり、何かをメタファーに使う、ということが苦手な監督なんですよ(笑)。ホウセンカで爪を染めるというのは、私が子供の頃によくしていた遊びでした。いまの子供たちからすると、ダサく見えるかもしれませんが、ソンはあまり裕福な家庭の子ではないけれど、手先は器用なので、自分が得意なことを見せつつ、友達のジアを慰めてあげたい、という側面も出ると思ったので、ソンに似合う遊びとして取り入れました。
そして、ボラたちと遊ぶときも何か一つ入れたいと思って、一度爪を使ったので、今度はマニキュアにしてみれば、ホウセンカと対比できるな、とその程度の考えで取り入れました。そしたら、映画が完成した後、見た方から、ホウセンカの場合、なかなか取れないことから“真の友情”の象徴で、マニキュアはすぐに落とせるから、“一時的な友情”なんじゃないかという意見が出て、私が意図していた以上に、いい解釈をしてくださったようです。

(4ページにつづく)

2017.09.18