今回のイベントでは、ファンからの質問コーナーも設けられ、手を挙げるファンをチョン・イルが自ら指名。5人のファンの質問に回答することになった。
1人目の質問は「爽やかなイメージが多かったが、ギウを演じて大変だったことは?」。チョン・イルは「俳優というものは今の地位に安住せずに、絶えず変化し続けなければならないと思っています。そういう意味で、これまでに皆さんがチョン・イルという俳優に対し持っているイメージから脱皮したいと思っていて、このギウ役を選びました。ギウという役は感情の起伏が激しく、心に痛みを抱えたキャラクターです。ですので、そういった役を演じるというのは難しくもありましたが、いつも監督が横でいつも助けてくれました」と話した。
チョン・イルの「どうぞー(日本語)」という呼びかけで2人目の質問者の番へ。「演じる前と演じた後の気持ちの変化や、今後の目標は?」という質問に、チョン・イルは「この映画が公開された後に、いろんな人がチョン・イルはこういった演技ができるんだという良い評価をしてくださったのでとても嬉しかったです。俳優として始めた当初から今も目標は変わっていません。柔軟性のある俳優でありたい、当然のことではありますが演技の上手い俳優でありたい、それから皆さんに良い影響力を与えてあげられるような俳優になるということが目標です」と語った。
3人目の質問者は「劇中のチョン・イルの汚れっぷり、ホームレスっぷりが凄くて匂いまでしそうだった」と感想を伝えつつ、汚し方について質問。チョン・イルは笑いをこらえながら「ちょっとしたトピックスで話すと、劇中、僕が着ている服は監督が市場に行って買ってきたものです。それから僕がはいている運動靴は僕が20年くらい持っていた古い靴をそのまま履いています。サービスエリアで撮影が多く行われたのですが、ホームレスの役なので、撮影中でなくてもあちらこちらに座り込んだり、何かを食べたりしていたのですが、誰も僕のことを気付くことはありませんでした。だから、成功したなと思いました(笑)」と撮影秘話を語り、ファンを驚かせた。
4人目の「いろんな側面を持つギウを演じる上で、大切にしたことは?」という質問に対して、チョン・イルは「その点については監督とたくさん話した部分です。ギウにとってはこの世で家族がすべてです。家族が彼にとって生きる理由になっていますし、たくさんのことを経験した末に社会に対して門を閉ざし、自分の中の世界で生きていて頼れるのは家族だけという人物です」と語り、監督は「ギウというキャラクターについてチョン・イルさんといろんな話しをしながら一緒に作り上げていきました。ギウという人物を通して、世の中を皆さんにもう一度見直してほしいと思いました。韓国においてセーフティーネットというものがありますが、そこから滑り落ちてしまった人達がいる資本主義の中で適応できない人達がたくさんいます。ですから、そういう人達がいろんな心配、怖さを抱えている、それが極限に達しているのがギウという人物です。なので、常に何かから逃げている、世の中から遠ざかろうとしています。そういった姿を通して、周りの人達や世の中について見直してほしいと思いました」と映画に込められた想いを伝えた。
最後の質問者は「子どもたちとどのように仲良くなったのか?」という質問に、チョン・イルは「子どもたちと仲良くなるには、彼らの視線でものを見て、彼らの行動を考え、彼らの話を聞いて受け入れることが大切だと思っていました。そしてすぐに仲良くなる方法としては、子どもたちが好きなおやつを食べてもらうことです(笑)。現場では子どもたちと一緒に遊んだりして彼らの視線で触れ合うようにしていました」と振り返った。
質問者にはチョン・イルがプレゼントとしてハンカチを準備。彼は「映画をご覧いただけば、なぜハンカチを準備したかわかると思います」と説明し、ハンカチをひとりひとりに渡して握手をし、ファンを喜ばせた。
舞台挨拶はあっという間に終わりの時間へ。最後に監督は「この映画が日本の観客の皆さんの前でこのように上映の日を迎えられることが上映の機会が与えられたことにとても光栄に思っています。ありがとうございます」と伝え、チョン・イルは「日本で僕が出演した映画が公開できるようにご尽力いただいた関係者の皆様、そしてファンの皆さんに心から感謝したいと思います。家族という意味を改めて考えさせてくれる映画だと思います。そしてたくさんのメッセージが込められています。映画の結末は映画ご覧になった皆さん自らが判断して決めていただければなと思います。いま僕はきちんとしていますが、劇中のギウを見てもしかしたら映画を見終わった後はこういうギウのこの姿の方がよく似合うんじゃないかなと思うかもしれません(笑)。映画を楽しんでご覧いただきたいと思います。そして見終わった後はたくさんの口コミを広げていただければと思います。(日本語で)皆さん本当にありがとうございます」と。
マスコミ向けのフォトセッションでは、映画のポスターの向きを変える際にポスターが倒れてしまうが、それをチョン・イルはサッと持って、一つ一つのカメラに視線を送り、指ハートを送ったり笑顔で手を振ったりと、またもや神対応ぶりを見せた。
最後はステージギリギリまで前に出てファンに手を振り、チョン・イル特有の極上スマイルをプレゼントした。
取材:Korepo(KOREAREPORT.INC)
『高速道路家族』
2023 年4 月21 日(金)シネマート新宿ほか全国順次公開
<ストーリー>
「財布を失くしてしまったので、2 万ウォンだけ貸してくれませんか?」
テントで寝て、夜空の月を照明として暮らすギウ(チョン・イル)と3 人の家族。彼らは、高速道路のサービスエリアを転々とし、再び遭遇することのない訪問者に2 万ウォンを借りながら食いつないでいる。ある日、すでにお金を借りたことのあるヨンソン(ラ・ミラン)と別のサービスエリアで再び遭遇してしまう。不審に思ったヨンソンはギウを警察に届け出る。ヨンソンは残されたギウの妻ジスク(キム・スルギ)と子供2 人を放っておけず、家へ連れて帰り一緒に暮らすことに。何不自由のない生活を送るジスクと子供たち。そんな家族をギウは取り戻そうとするが…。相反する二つの家族の出逢いがとんでもない結末を迎えることとなる。
監督・脚本:イ・サンムン
音楽:イ・ミンフィ 『ひと夏のファンタジア』『最善の人生』
美術:ソン・ソイル 『ポエトリー アグネスの詩』『バーニング 劇場版』
出演:チョン・イル、ラ・ミラン、キム・スルギ、ペク・ヒョンジン、ソ・イス、パク・ダオン
2022 年/韓国/韓国語5.1ch/128 分/英題:Highway Family/字幕翻訳:具美佳/G 指定
配給:AMG エンタテインメント
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