「個別インタビュー」映画『オオカミ狩り』キム・ホンソン監督 ソ・イングクは一度沼にハマったら抜け出せないブラックホールのような魅力的な俳優

本作が作られることになったきっかけは、2017年にフィリピンへ逃亡した韓国人犯罪者47名の集団送還のニュースを見たこと。普段から“改造人間”というものに興味を持っていたことから、それを素材にして作り、完成までに4か月ほどかかったそうだ。そして、そこからシナリオを演者側に合わせて修正していったそうだ。

「役柄についてはシナリオにあるものを俳優を通して表現していくことになるので、俳優さんに合うように少し変えることもあります。ソ・イングクさんの普段の言葉遣いや仕草などに合わせて、撮影する前に修正していき、それをもとに演じてくれています。今回はジャンル映画なので、スケジュール通りに進めて編集を加えていく必要があったので、撮影現場で即興で台詞を作っていくということはほとんどありませんでした。感情表現についても事前に相談していきながら撮影していきます」。

映画のポスターや場面写真を見る限り、キャストはほぼ血まみれ。目を覆うような惨劇なシーンが展開されていくのがわかる。実際に人を殺すわけではないが、狭い船上での殺し合いのシーンを撮影することは大変だったに違いない。

「大変だったことと気を遣ったことと一致しているのですが、それは“安全”でした。安全というのは肉体的な安全と精神的な安全を保つということでした。今回は、目を覆いたくなるような凄まじいシーンがたくさん出てくるので、俳優さんもスタッフたちも笑いながら楽しんで撮影をしていたものの、人が亡くなるシーンが出てくるので、精神的に辛くなりかねないシーンがたくさんありました。でもここで少しでも気を緩めてしまうと、精神的にもダメージを負いかねないので、それを上手くコントロールしながら撮影していくことが大事なことでした。それから、アクションシーンでは、実際の船の中で撮影したのですが、怪我をしてしまってはすべてが台無しになるので、『安全に』という言葉を一日に数十回言うほど、安全を重ねて撮影していきました。そんな風に撮影したので、とても苦労はしましたが、誰一人怪我することなく無事に撮影を終えることができたので、ご先祖様や神様に感謝しています」。


ショッキングなシーンが続く中、現場では楽しい雰囲気のなか撮影されたそうだ。彼は「特にムードメーカーがいたわけではないのですが、みんなノリながら撮っていました。これは良いことか悪いことかわかりませんが、この映画は『韓国の映画史上最も残忍な映画』と韓国で言われていました。ですので、俳優にとってもスタッフにとっても、すべてが初めて撮るシーンが多かったんです。人を殺すシーンでも、ここまで表現するのかというくらいのものを表現していましたが、実際にしているわけではないので、新鮮なものということで楽しみながら、不思議がりながら笑って撮影していました。俳優さんも普段はロマンチックコメディのようなジャンルで演じている人たちなので、今回の映画に出演することで新しい演技に挑戦するという場でもありました。ですので、とても楽しく撮影していたと思います」と話し、「全般的に私の作品の撮影現場は楽しいんですよ。私一人でそう思っているだけかもしれませんが・・・」と付け加え「ハハハ」と笑顔で話してくれた。

“韓国の映画史上最も残忍な映画”を作った監督が普段どんな作品を観ているのかも気になって聞いてみると、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『アモーレス・ペロス』、フェルナンド・メイレレス監督の『シティ・オブ・ゴッド』、アントワン・フークア監督の『トレーニングデイ』といったサスペンス・アクションやピーター・チェルソム監督の『セレンディピティ~恋人たちのニューヨーク~』、デヴィッド・O・ラッセル監督の『世界に一つだけのプレイブック』といったロマンチックコメディが好きで、日本では「半沢直樹」と漫画の「キングダム」がお気に入りだそうだ。

ジャンルを問わず作品を観ている監督の今後の作品がどんなジャンルのものになるかも気になるところだが、彼は「最近はありがたいことに、海外の映画祭に行くことが多くなりました。アメリカで準備している作品があるので、いろいろなシナリオをもらって読んでいるのですが、そこからもいろいろなインスピレーションを受けています」と話した。

最後に、監督は「まずは映画を楽しんでいただければ幸いです。さまざまなキャラクターが登場し、多くの俳優の皆さんが最高の演技を見せてくれているので、俳優たちのシナジー効果を楽しんでくださればと思います。また、型破りなストーリー展開やハードボイルドなアクションをぜひ映画館に足を運んで観ていただければ嬉しいです」とアピール。


そして、「この中で伝えたかったことは、私たちは暴力的なことを目にしていて、暴力というのは人間の社会の中で繰り返し起きています。これ以上こういった暴力的なことが起きてほしくない、人間性を失うことなく暴力的な社会ではない社会になってほしい、人間が人間らしく人と触れ合っていける社会になってほしいという願いを持っています。そういったことを内面的に考えながら作っていきました。劇中の怪人“アルファ”は、舌が切り取られ、目も潰されて耳も切られています。なので、人間性を失った、人間性を喪失したものが具現化されたキャラクターとなっているのですが、“人間らしさを失わないでほしい”という思いを“アルファ”を通して描いています。そういったことも皆さんには感じとっていただけたら嬉しいです」と作品に込めた熱い想いを語った。

ソ・イングク主演映画『オオカミ狩り』は、4月7日(金)より、新宿バルト9ほか全国公開!

『オオカミ狩り』
Intro
極悪犯罪者 VS 警察 VS 怪人
生死をかけた海上監獄バトルロイヤルがいま、始まる。

フィリピンに逃亡した極悪犯罪者たちと護送官の刑事を乗せた貨物船“フロンティア・タイタン号”。
太平洋のど真ん中に浮かぶ監獄は、犯罪者たちの反乱により血で海を染める。
そして、“怪人”が目覚めたとき船上は地獄と化す。果たして、生き残るのは……。

Story
死ぬか。殺すか。行き先は、地獄。

2022年、フィリピン マニラ。現地で逮捕された犯罪者たちを乗せた貨物船“フロンティア・タイタン号”が釜山港に向けて出航した。長年、凶悪犯罪を担当してきたベテラン刑事の約20人が護送官として乗船。釜山では、海上交通管制センターで海洋監視システムを設置。万全な体制により、韓比共同護送計画(プロジェクト名:オオカミ狩り)が進められた。監獄化した貨物船には、13名に対する殺人および殺人教唆、強姦罪に問われ第一級殺人犯として国際手配されたジョンドゥ(ソ・イングク)、特殊暴行17件で赤手配者のドイル(チャン・ドンユン)など極悪非道な犯罪者たちが収容されていた。その夜、密かに脱走を企てていたジョンドゥと刑事として紛れ込んでいたジョンドゥの一味により暴動が勃発。船上は武器を手にした犯罪者たちで溢れかえる。仲間以外は誰であろうと容赦なく殺める犯罪者たちと彼らに立ち向かう警察。そこに、眠っていた“怪人”が目を覚まし、熾烈な戦いが幕を開ける。地獄の航海から生き残るのは誰か……。

監督・脚本: キム・ホンソン
出演:ソ・イングク、チャン・ドンユン、ソン・ドンイル、パク・ホサン、チョン・ソミン、
コ・チャンソク、チャン・ヨンナム、チェ・グィファ
2022|韓国|121分|シネスコ|5.1ch|原題:늑대사냥|英題:Project Wolf Hunting
字幕翻訳:石井絹香|配給:クロックワークス|R15+
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公式HP:https://klockworx-asia.com/pwh/
クロックワークス公式 Twitter/Instagram:@klockworxasia「#オオカミ狩り」

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2023.04.03