―これだけの豪華キャストが揃ったのは監督だからこそだと思いますが、撮影スケジュールの兼ね合いでキャスティングが変更になるなど、大変だったと聞きました。その中でも、この役のこの俳優はどうしても譲れなかったという俳優さんはいらっしゃいますか?
キャスティングというのは思い通りにいかないもので、例えば今回、イ・ジヌクさんは他の役を考えていたんですが、ドラマのスケジュールが入ってしまったので、役を変えたりしました。カン・ハヌルさんに関しては、やはりジェヨン役はカン・ハヌルさんでなければ、できなかったのではと思っています。適役でしたよね。今となっては、あの役は彼以外、想像できないです。
本当にキャスティングは難しいもので、頭の中で20代のチョン・ジヒョンさんをキャスティングしたいと思っても、20代のチョン・ジヒョンさんはもういないので、キャスティングできませんよね。それから、先代のCEO役だったシン・ソンイルさんをキャスティングしたいと思っても、もうこの世にいらっしゃらないのでキャスティングできないということもあり、この俳優と仕事をしたいと思っても叶わないことがよくあります。現実に存在している俳優でも、スケジュールが合わないと存在していないのと同じことになってしまうので、キャスティングに関しては運に任せるしかないと思っています。そうして実際にキャスティングが決まったら、あとは最善を尽くして、本人とキャラクターをうまくマッチさせる努力をする、というのが監督である私の役割だと思っています。
今回、全員のキャラクターをキャスティングするのに時間がかかったんです。だから、最初にキャスティングが決まっていたキャサリン役のイ・ヘヨンさんを待たせる形になってしまい、その間、彼女のスケジュールが変わってしまわないか、ずっとハラハラしていました(笑)。
―物語を引っ張るハン・ジミンさんの表情がとてもチャーミングでかわいいと感じましたが、演技において、監督の方からリクエストしたことなどはあったんでしょうか?
ハン・ジミンさんはこれまで暗い役や今回のソジン役とは違ったタイプの役が多かったんですが、私としては、これはかわいいな、これはどうだなというのは客観的に彼女の演技を見ながら考える必要があり、例えばスンヒョに出してしまったハガキを、彼に見られる前に取り返してほしいと弟に頼むシーンは、猫みたいな感じで、猫が飼い主にすがるような表情をしてほしいとお願いし、演じてもらいました。だから、今回ハン・ジミンさん本人も演じてみて、“自分にもこんなかわいいところがあったんだ”って気付いたんじゃないでしょうか(笑)。
―劇中、高校生から中高年までいろいろな世代のカップルのエピソードに交じって、人気アーティスト(ソ・ガンジュン)とマネージャー(イ・グァンス)という男同士のエピソードも異彩を放っていました。男女カップルだけにしなかったのはどうしてでしょうか?
芸能界において、マネージャーと俳優の関係というのはお互い裏切ったりするケースが多く、サンフン(イ・グァンス)のように一人の俳優だけに、自分の一生を捧げるマネージャーというのは実は少ないんです。だから、ラブストーリーにピュアな女性キャラクターが登場するのと同じように、男性でもピュアなキャラクターがいてもいいのではないかと。男女カップルが多いラブストーリーではありますが、同性愛ではなく、友情で結ばれた男同士の物語を一つ入れるのもいいのではないかと思いました。
―劇中の季節は年末の冬ですが、撮影は夏だったそうですね。大変だったかと思いますが。
そうなんです。しかも俳優たちはマフラーもつけていたので。スタッフは半そでで涼しい格好をしていましたが、俳優たちは分厚い衣装で、しかも、実際カメラが回ると、エアコンを消さないといけないので、本当に苦労しました。
―音楽に関してもお伺いします。スンヒョがヨンジュにプロポーズするシーンの音楽は、監督の娘さんが曲を、監督が歌詞を作られたそうですね。
今回私の娘が音楽の助監督として参加しています。娘が作曲した曲は他にも、アイスリンクのシーンで流れる音楽とか、カン・ハヌルさんとユナさんが廊下ですれ違うときに流れる大事な音楽とかたくさんあるんですが、プロポーズのシーンは、みんながよく歌っているハッピーバースデーの歌のように、プロポーズにふさわしいような曲はないだろうか、と娘に作ってほしいとお願いしました。それで、歌詞が必要なので、歌詞は私が書くことになりました。
―日本でいよいよ公開となりますが、観客にはどのようなところに注目して見てほしいか、メッセージをお願いします。
『ハッピーニューイヤー』は愛を通して幸せを見つける物語です。この映画は今年に限らず、毎年楽しめる作品です。人は新年を迎えるとき、怖いと思う人もいれば、新年こそは自分の愛を成就させたいと願う人もいて、いろいろな思いがあると思いますので、どの年の年末に見ていただいても、ぴったりの作品だと思います。そして、“来年はきっと幸せになりますよ”という強いメッセージを込めた作品ですので、ぜひご覧ください。
クァク・ジェヨン監督はインタビュー中、イ・グァンスのことを話しながら、突然思い出したように、衣装合わせのときに撮った写真で面白いものがあるとし、自分のスマホから探し出して画面越しに、写真も見せてくれた。どんな写真かというと、イ・グァンスの身長が高いので、全身鏡をイスの上に乗せて高さを調節したビフォー・アフターの写真で、「これでよくやく全身を見ることができたんです。それぐらい背が高いんですよ(笑)」とニッコリし、イ・グァンスと撮った2ショット写真もうれしそうに見せてくれた。
また、プロポーズシーンの音楽の話では、その曲のワンフレーズ「あなたを愛してます♪」を歌ってくれるなどお茶目でサービス精神旺盛な監督だった。『ハッピーニューイヤー』はそんなクァク・ジェヨン監督の優しさ、温かさが感じられる心温まる作品だ。
取材:Korepo(KOREAREPORT INC)
STORY
不器用な初恋、友人へのトキメキ、そして忘れていた過去の恋…
大みそかの夜、ホテル〈エムロス〉に恋する14人が集まる――!
ホテル〈エムロス〉の宿泊客は、クリスマスと新年のポジティブな雰囲気に浮かされていた。ホテルのマネージャーソジン(ハン・ジミン)は、占い師に「年末までに愛の告白を受ける」と言われ、15年も片思いをしている男友達のスンヒョ(キム・ヨングァン)との未来を期待していたが、思いがけず彼の結婚の知らせを聞くことになり、いきなり婚約者(コ・ソンヒ)を紹介される。
ホテル〈エムロス〉のCEOヨンジン(イ・ドンウク)は、この世のすべてを手に入れたかのような完璧なスペックと見た目の持ち主だが、人生における何もかもがペアで、すべての数字が偶数で終わらないと気が済まないという不思議な強迫症の持ち主だ。自宅のボイラーが故障し、スイートルームに滞在することになった彼は、ミュージカル女優を夢見る新米ハウスキーパー(ウォン・ジナ)に出会い…
公務員試験に落ち続け、恋人にもフラれた就活生ジェヨン(カン・ハヌル)は、大晦日に自殺しようと決意し、人生の最後を高級ホテルで過ごそうと決め、〈エムロス〉にやってくる。
オーストラリアから韓国に帰ってきたビジネスウーマンのキャサリン(イ・ヘヨン)は宿泊するホテル〈エムロス〉で40年前の初恋の人に再会。なんと彼は偶然ホテルのドアマン(チョン・ジニョン)として働いていた。
一方、歌手のイ・ガン(ソ・ガンジュン)はマネージャーのサンフン(イ・グァンス)との契約期間が終わろうとしており、大手事務所からのオファーが相次ぐ。サンフンは、他の事務所の半分も出せないことを知り、彼を手放そうとする。
フィギュアスケーターのアヨン(ウォン・ジアン)は高校一の人気者で、男子生徒からの憧れの的。同級生のセジク(チョ・ジュニョン)は高校一の人気者であるアヨンに、友人たちから「告白しろよ!」とけしかけられ、途方に暮れる。
整形外科医のジンホ(イ・ジヌク)は、毎週土曜日、ホテルでお見合いをしているが、断られ続けている。従業員たちは、なぜこのようなハイスペックな人が断られるのかと、不思議な気持ちで見守っているが…
果たして、14人のロマンスの行方は?
ハン・ジミン、イ・ドンウク、カン・ハヌル、ユナ(少女時代)ら、韓国の最旬豪華キャストが語る、映画『ハッピーニューイヤー』特別映像 12月9日(金)公開【公式】
公開日:12月9日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:クァク・ジェヨン
出演:ハン・ジミン「私たちのブルース」、イ・ドンウク「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」、カン・ハヌル「椿の花咲く頃」、ユナ(少女時代)『EXIT イグジット』、ソ・ガンジュン「天気がよければ会いにゆきます」、イ・ジヌク「結婚白書」
原題:HAPPY NEW YEAR/2021/韓国/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/138分
字幕翻訳:根本理恵
配給:ギャガ