映画『猟奇的な彼女』『ラブストーリー』などを手掛けた韓国恋愛映画の名匠、クァク・ジェヨン監督が、初の群像劇に挑んだ『ハッピーニューイヤー』。ハン・ジミン、イ・ドンウク、カン・ハヌル、ユナ(少女時代)、ソ・ガンジュンら豪華キャストの共演が韓国公開時(2021年)も大きな話題となったが、そんな本作が日本でもいよいよ12月9日(金)より公開となる。クァク・ジェヨン監督にリモートインタビューを行い、制作背景やキャスティング秘話などを聞いた。
―『ハッピーニューイヤー』は王道のロマンス映画で、14人の愛の物語をオムニバス形式で描かれていますが、このような見せ方にしたのはどうしてでしょうか?
さまざまな人物が登場しながら、2~3週間という短い期間の愛の物語を描こうと思ったら、ホテルという空間でオムニバス形式が一番適切だと思いました。2000年代前半に『ラブ・アクチュアリー』が登場し、それがずっと頭の片隅にありましたが、もう一つ「黄昏流星群」を見て、私も群像劇の映画を作りたいなと思っていたんです。だから、『ラブ・アクチュアリー』から数えると、20年後ぐらいにようやく、それが叶ったということですね。
―キャラクター設定において、主要人物が14人も登場しているのに嫌な人、悪い人が一人もいないというのも特徴だったかと思います。
これまでも私の作品では悪人が出てこないことが多く、それを意図しています。普通は悪のキャラクターがいるからこそ、ストーリーを引っ張っていけるようなところもありますが、私としては悪人なしで映画を撮るということがまた一つの新しい方法になるのではないかなと考えています。
例えば、『ラブストーリー』にも悪人はいないんです。イ・ギウが演じたテスというキャラクターは、あまりにも優しすぎたために、いろいろな物語が生まれていくという展開でした。そのように悪人なしで、いかにストーリーを作ったらいいのか、ということを考えて常に作品作りをしています。でも、実は今回の作品には悪役がいたんです。それは公務員試験を受けようとしているジェヨン(カン・ハヌル)を苦しめている社会です。社会が悪だったということです。
―スンヒョ(キム・ヨングァン)をめぐるソジン(ハン・ジミン)、ヨンジュ(コ・ソンヒ)の三角関係もドロドロしたものがなく、後味がとても良かったように感じました。
スンヒョを女性2人が好きになりますが、ケンカはせず、いい解決を見つけていこうという方向で考えました。つまり、本人たちが悪ではなく、本人を取り巻く環境が悪だったり、厳しい環境の中にいる人たちがどう克服するか、というところを描く方に重点を置きました。
スンヒョはなかなか告白できないんですが、それは誰かが告白させなかったのではなく、彼の内面の問題になっています。外部に悪人がいたから、告白できなかったということではなく、スンヒョ自身が照れ屋でなかなか言い出せないという設定にしました。
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