「コラム」康熙奉(カン・ヒボン)のオンジェナ韓流Vol.240「放送から1年が経った『赤い袖先』」

イ・ジュノが主演した『赤い袖先』が韓国MBCで放送を開始したのは2021年11月のことだった。放送開始からちょうど1年が経った。それでも今年10月からDVDも発売になり、このドラマの名声はさらに高まっている。『赤い袖先』(MBC)の公式サイトより

「時代劇の進化」

主演したイ・ジュノは、今年5月に開催された百想芸術大賞・テレビ部門で堂々たる男子最優秀演技賞を受賞した。
俳優であれば誰もが「最高の名誉」と考える最優秀演技賞。「演技が一番素晴らしい俳優」と評価されるわけなので、イ・ジュノも本当に望んでいた賞だった。それをK-POP出身者で初めて受けて、彼もさぞかし満願であったことだろう。
放送開始から1年が経って改めて振り返ってみると、『赤い袖先』は「卓越した映像美」「史実をうまく取り入れた歴史ストーリー」「抒情性を織り込んだ創造的な演出」という三つの面で画期的な特徴を持っていた。
長く時代劇を見てきて感じたのは、『赤い袖先』は「以前の時代劇とは明らかに違いがあった」ということだ。
これはまさしく「時代劇の進化」と捉えることができた。

時代劇の系譜に強く残る

主役のイ・ジュノは、イ・サンが世子から国王になっていく過程を時系列で演じたのだが、特に世子時代は、重鎮俳優イ・ドクファが演じた英祖(ヨンジョ)から厳しく叱責される場面が多かった。
そこは、緊迫感が押し寄せるシーンの連続となっていたが、イ・ジュノは感情を抑えながら意志の強さを強調する演技で、堂々たる世子に扮していた。
国王になろうとする人物はここまで耐えて自分を見失わない……という姿をイ・ジュノは立派に見せた。
その存在感がドラマを引き締め、『赤い袖先』が主題として描いた宮女との究極的な愛でも、イ・ジュノは繊細な演技で表情に多様性をもたらしていた。
ヒロインのソン・ドギムに扮したイ・セヨンとも相性が良かった。それゆえ、2人の演技にはときめくような「華」があった。
こうして『赤い袖先』は時代劇の系譜に強く残る傑作となった。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

2022.11.05