ペ・ヨンジュンは、恩人とも呼べるユン・ソクホ監督と義理があるMBCの両方から熱烈なオファーを受けていた。彼は、「KBSにするか、MBCにするか」ということを早く決断しなければならなかった。
恩義のある2人
実際、ペ・ヨンジュンはKBSで育てられた俳優とも言われた。『愛の挨拶』でデビューしてから、『若者のひなた』『パパ』『初恋』『裸足の青春』と、ずっとKBSのドラマに出演していた。特に専属契約を結んでいたわけではなかったが、ペ・ヨンジュンはデビューから自分を引き立ててくれたKBSに心から感謝し、ずっと同局のドラマに出演していたのである。
ただし、『裸足の青春』以後、ペ・ヨンジュンとKBSの間がギクシャクして、彼が内定していたKBSのドラマを降りるという出来事もあった。
KBS側は「ペ・ヨンジュンが共演者のキャスティングに口を出してくる」と不満をもらし、ペ・ヨンジュン側は「誤解であり、口を出したことはない」と弁明したのだが、両者の関係は修復できなかった。
しかも、KBSのあるPDは「今後はペ・ヨンジュンをKBSのドラマに出演させない」と明らかにしたこともあった。
こうした状況の中で、ペ・ヨンジュンはKBS以外で初めてのドラマに出演することになった。それが1999年の『愛の群像』だ。それだけに、ペ・ヨンジュンはMBCにも恩義を感じていた。
結局、親しい2人のPDから出演依頼を受けて、ペ・ヨンジュンも大いに迷った。
ここで、もし、ペ・ヨンジュンがMBCを選んでいたら、果たしてその後の韓国ドラマの展開はどうなっていただろうか。
日本で韓流ブームが起きたきっかけは、誰もが指摘するように、『冬のソナタ』の放送だった。特に大きかったのはペ・ヨンジュンの主演ということ。彼のたぐいまれな魅力が韓国ドラマのイメージを飛躍的に高めたことは間違いない。
けれど、もし『冬のソナタ』がペ・ヨンジュンの主演でなかったとしたら……。
おそらく、日本での韓流ブームも違ったものになっていたかもしれない。それだけに、ペ・ヨンジュンが『冬のソナタ』への出演を決断したことが、本当に大きな分岐点になった。
それでは、なぜ、ペ・ヨンジュンはKBSを選んだのか。
2人のPDを比べるわけではないが、やはりデビュー時に自分を育ててくれた人は特別なのである。その恩に報いたいという気持ちも強かったし、俳優としての自分自身の成長を名監督に見てもらいたい、という思いも募っていた。
それゆえ、シナリオをまだ読んでいないにもかかわらず、ペ・ヨンジュンはユン・ソクホ監督の作品を選んだのだ。
(次回に続く)
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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