「コラム」日本と韓国の物語「第14回/日延(前編)」

誕生寺の入口

 

JR外房線の安房小湊駅で降りると駅前に人影はまばらで、タクシーが列をなして客を待っていた。時期は7月の第2週目であった。あと1週間もすれば子供たちも夏休みとなり、大勢の海水浴客が訪れることだろう。しかし、今は訪れる人も少ない様子だった。

 

日蓮と日延
タクシーに乗り、運転手さんに「誕生寺まで」と告げた。走り出してから、私は「日延(にちえん)さんはここでも有名なんですか」と聞くと、「もちろんです。誕生寺を作った方ですからね」と運転手さんは答えた。
私(康熙奉〔カン・ヒボン〕)の発音が悪いのか、「日延」が「日蓮(にちれん)」に聞こえたようだ。私は言い直した。


「日蓮さんではなくて、日延さんですけれど。誕生寺の貫主様だった方ですが……」
「その方はまったく知りませんね。聞いたこともありません」
そう言われてしまったので、いささか心細くなってきた。
やがて誕生寺に着いた。タクシーで駅から5分ほどだった。

有名な古刹だけに、門前に土産物店があって、中年の女性が通る人を呼び込んでいた。私はそこには近づかず、ゆっくりと総門をくぐって行った。
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2021.12.27