第4回 米びつに閉じ込められた世子
英祖(ヨンジョ)は意地になって、「たったいま世子(セジャ)を廃したのだが、史官はちゃんと聞いていたのか」と大声を出した。史官といえば正式な記録を残す官僚である。英祖は、自分の言葉を正式な文書に残すことをはっきりと要求した。
懇願する世子
思悼世子(サドセジャ)は泣き続けていた。震えがとまらず、顔は恐怖におののいていた。
彼はいったん英祖の前を離れて、外に出ていた側近たちに近づき、「どうすればいい? 誰を頼ればいいのか」と尋ねた。
側近の1人が「再び殿下の前に出て処分を待つしかありません」と答えた。
確かに、その通りだった。この場から逃げても、有利になることは一つもなかった。
思悼世子は泣きながら再び前庭に出て、ひざまずいて地面に額をこすりつけた。
「過ちを改めて今後は正しく生きますので、どうか許してください」
思悼世子は何度も何度も哀願した。
すると、英祖は驚くべきことを話し始めた。
「映嬪(ヨンビン)が余になんと言ったと思う? そなたがいかに世子にふさわしくないかを泣きながら訴えてきたのだ。もはやこれまでだ。そなたが自決しないかぎり、この国は安泰とならない」
この言葉を聞いた誰もが信じられない思いだった。(ページ2に続く)