BTSに関連した書籍は次から次へと発行されているが、今度新たな書籍が日本で発刊される。それが、『BTS オン・ザ・ロード』(ホン・ソクキョン著・桑畑優香訳 玄光社発行)である。とても興味深い本だ。
今までと違うアプローチ
揺れ動く現代において、BTSは何を変えてきたのか。
様々なことが識者によって語られているが、一つ言えるのは「世界的な連帯」ではないのか、と思える。
それを導いてきたのが、間違いなくARMYの存在だった。
著者のホン・ソクキョン氏はソウル大学の言論情報学科の教授であるが、彼は本書の最初にこう書いている。
本書はこれまでのBTS本と異なるのは、BTSを「特定の状況のなかでいくつかの構成要素によって形成されたひとつの現象」としてアプローチしている点だ。ひとつの現象としてBTSにアプローチすることは、彼らをミュージシャン、メッセージ、音楽的なアイデンティティ、美学的な対象などに分けて取り上げるのではなく、それらを超えたひとつの相対的なポップカルチャーとみなし、社会的・世界的な現象として理解することだ。
BTSをめぐるさまざまな現象は、実はファンひとり一人の経験を伝える声によって明かされる。だからBTS現象を研究するということは、現場のさまざまな声を知識にもとづいて一般化すると同時に、一般化された経験の意味を問い直す作業であるべきだ。
こうした著者の言葉のとおり、本書ではファンの視点からBTSが多角的に語られていく。
仮説が事実になる
BTSの勢いは、とどまるところを知らない。
それは、ARMYの強い支えがあることが本当に大きい。
そういう意味で、BTSはメンバー7人の魅力とARMYを加えた連帯がいつまでも勢いの原動力になっている。
桑畑優香氏は、訳者あとがきでこう書いている。
圧巻なのは、フィールドワークにもとづくARMY分析だ。従来のK-POPファンとは異なるファン層であることや、SNSや動画をきっかけに沼落ちした経緯など、これまで「仮説」のように伝えられてきたことが、約100人のファンへのロングインタビュー調査をもとにしたデータによって「事実」として裏付けられる。
こうして本書では、BTSに関して仮説となっていたことが事実として明らかになり、彼らが持つ世界の広がりが読者の心に広く伝わっていく。
まさしく、貴重な本が日本でも発刊されたと言える。
文=康熙奉(カン・ヒボン)