◆2020年下半期の女子高生トレンドキーワードを予測&選出~「アイテム」部門~
次に、「アイテム」部門のトレンドとなりそうなキーワードを予測&選出しました。
まず、アプリゲームの「キメロワ」と「ツイステ」に注目。「キメロワ」は「鬼滅の刃 血風剣戟ロワイアル」の略称で、2020年中にリリース予定のアプリゲーム。公式Twitterには既に19万人のフォロワーがつくほど期待が寄せられています。「ツイステ」とは「ディズニー ツイステッドワンダーランド」のことで、2020年3月にリリースされたアプリゲーム。公式Twitterは80万フォロワーを超え、Instagramではファンコミュニティ「#ツイステ好きさんと繋がりたい」が2.8万投稿と、早くも盛り上がりを見せています。リリース間もないゲームからこれだけの投稿が発生している理由として、「SNSミーム」として楽しめるだけのキャッチーさと素材力が挙げられます。『黒執事』の作者である「枢やな」さんが、ディズニー作品から着想を得て描いたというキャラクターの素材力、思わず考察したくなるストーリーのキャッチーさが、その理由だと考えられます。また、中国コスメブランド「ZEESEA」は本作の「概念コスメ」(配色やデザインが推しのイメージに当てはまるコスメのこと)であることによって話題となっており、これもある種の「SNSミーム」といえそうです。
そして、「Nizi Project」に続くオーディションプロジェクトとして話題を集め始めている「I-LAND」。「I-LAND」は「BTS」や「TXT」が所属する「Big Hit Entertainment」と、「PRODUCE」シリーズを企画した「CJ ENM」によって共同開催されるオーディションプロジェクトです。2020年6月26日、日本ではABEMAにて放送を開始。深夜放送にも関わらず、Twitterでは韓国トレンド1位、世界トレンド7位、日本トレンド10位を獲得するほどの盛り上がりを見せています。
メイク・コスメ関連では、「地雷メイク」に続くトレンドとして「フィルターメイク」、ブランドとしては「rom&nd」に注目です。2020年上半期アイテム編において8位にランクインした「雲メイク」の他、「虹メイク」、「桜メイク」、「ハートチーク」、「顔面シール」など、アプリのフィルター加工のようなメイク=「フィルターメイク」(TT総研による造語)は「SNSミーム」としてますます流行する兆しが。これに伴い、カラーアイライナーやラメマスカラといった派手なコスメの人気が予想されます。一方、マスクメイク需要も続く中でマスク落ちしない最強ティントとして、韓国のコスメブランド「rom&nd」が支持を集めそうです。韓国のYouTuber「민새롬(ミン・セロム)」さんが2016年に立ち上げたブランドで、2020年上半期から動画で紹介する日本のYouTuberも増えはじめており、流行の予感です。
最後に、スイーツ分野としては、「豆花」(豆乳で作ったヘルシーな台湾スイーツ)をはじめとする「ヴィーガンスイーツ」に着目。外出機会の減少や、マスク着用機会の増加によってタピオカの飲み歩きやクレープの食べ歩きができないことや、ステイホーム期間を経て健康志向が高まっていることが要因となり、店内や持ち帰りでヴィーガンスイーツを食べることがトレンドになりそうです。また、7月21日には「豆花」が食べられる台湾カフェ「春水堂」が京都に初進出。食べる前に透明色のシロップをかけるという「SNSミーム」として機能するポイントを備えているため、特に西の女子高生の間でトレンド化しそうです。
いずれのアイテムも「SNSミームとして楽しめるキャッチーさと素材力」があり、その有無が、2020年下半期に女子高生の間でトレンドとなるポイントといえそうです。
◆2020年上半期の女子高生トレンド東西ランキング~アイテム編~
続いて、2020年の上半期トレンドを調査するとともに、過去の調査結果との比較分析をおこないました。
「2020年上半期に流行ったアイテム(フード、コスメ、エンタメなど)」については、東西ともに1位「あつ森」(東80.5%・西89.8%)、2位「地雷メイク」(東45.6%・西55.6%)という結果に。
1位の「あつ森」とは、任天堂が2020年3月に発売したNintendo Switch用のゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』のこと。Nintendo Switch用のパッケージソフトとしては過去最高の売り上げとなる人気ぶりで、発売から約3か月で国内累計500万本を突破しています。女子高生の間でも圧倒的な人気を集めた理由は大きく2つあります。
1点目は「コロナ禍のバーチャル空間需要」です。リア友(クラスメイトなどリアルで繋がっている友達のこと)とバーチャル空間で会う際に、あるいはオフ会(オタクコミュニティなどSNSで繋がっている友達と共通の趣味を楽しむ集会のこと)をバーチャル空間で開催する際に重宝されました。また、女子高生が支持するインフルエンサーの中には、誕生日会を「あつ森」上で開催し、ゲーム上でプレゼントを受け取るようなケースも多く見られました。
2点目に挙げられるのが、「クリエイティブ欲求の充足需要」です。「どうぶつの森」シリーズには「マイデザイン」という自分でデザインを作れる機能があります。前作の「とび森(とびだせ どうぶつの森)」の時点で既に、マイデザインをSNSに投稿することが可能でしたが、ここでは「デザイン情報」のみ。一方で「あつ森」では、「作者情報」も一枚絵で表示されます。女子高生のクリエイティブ欲求が高まり、「買う映え」から「作る映え」へとシフトしている今日。これまではひとり歩きしていたコンテンツが、「あつ森」では自分自身が「作者」としてコンテンツと一緒に拡散されるのです。その結果、Instagramでの投稿数は「#とび森」が4.2万投稿であるのに対し、「#あつ森」は48.2万投稿と10倍以上に。さらにTikTokでは「#あつ森」投稿の累計再生数はなんと12億回となっています。
また、東の4位・西の5位にランクインした「ちゃちゃまる」は「あつ森」で初登場したキャラクターです。「ちゃちゃまる」は「ぴえん」を象徴する絵文字を連想させるような、潤んだ目と困った表情である「ぴえん顔」の持ち主であることから人気キャラクターとなりました。TikTokでは「ちゃちゃまる」が登場する歌詞動画や面白動画、Instagramでは「ちゃちゃまる」の加工画像や「ちゃちゃまる」を模したカップケーキなど、様々な創作のネタとなり、「SNSミーム」として流行しました。
東西ともに2位となった「地雷メイク」は「病みメイク」とも呼ばれる、赤いアイシャドウが印象的な「病みかわいい」メイクです。前回、2020年トレンドとして予想していた「病み系トレンドの全方位化」が、上半期はメイク領域において最も盛り上がる結果となりました。もともと「地雷メイク」を日常的にしている女性は一定数いましたが、「藤田ニコル」さんがYouTubeで動画を公開して以降「地雷メイク」のハウツー動画が急増し、これまで「地雷メイク」をしたことのない層が「SNSミーム」として楽しむことでトレンド化しました。同じく、病み系トレンドとして予想していた「病み加工」は全体で7位(22.8%)、「チャイボーグ」も全体で9位(20.5%)にランクインしました。
東の3位「虹プロ」(45.1%)は、西では6位(25.9%)という結果に。「虹プロ(Nizi Projectの略)」は、ソニーミュージックと、韓国のJYPエンターテインメントによって共同開催されたオーディションプロジェクトです。2020年1月から6月にかけて、前半はHuluで配信され、後半は日本テレビ系の深夜枠で放送されました。同時にYouTubeや日本テレビ系の「スッキリ」でも特集を展開。また、ファンによるSNSを活用した熱狂的な応援はもちろんのこと、プロデューサーであるJ.Y.Parkさんの愛情あふれる表情や言葉が「SNSミーム」化したことも「虹プロ」の話題化に繋がりました。下半期のトレンド予測でもピックアップしたように、「虹プロ」から結成された新グループ「NiziU」は下半期も引き続き大注目のトレンドです。
東の5位(39.0%)・西の3位(54.6%)となった「恋つづ」は、TBSテレビ系列で2020年1月から3月にかけて放送されたドラマ「恋はつづくよどこまでも」のこと。毎週火曜日は「恋つづ」の関連ワードがTwitterでトレンド入りする盛り上がりでした。人気を後押ししたのは、ツンデレな恋人を演じた佐藤健さんによる公式LINEと、双方向ライブ配信アプリ「SUGAR」での生電話です。日常的に恋人のようなメッセージを公式LINEから送り、ドラマの放送30分前に「SUGAR」でテレビ電話をすることで、これらが「SNSミーム」として拡散され、ヒロインへの共感を高める効果を生みました。
今回ランクインしたアイテムを過去のランキングと比較すると、「あつ森」のようにゲームがランクインしたのは「荒野行動」以来、「地雷メイク」のようにメイク関連の事象がランクインしたのは「ティント」以来。「恋つづ」は、「あな番」に続く女子高生の人気ドラマとなりました。テレビ番組やゲームだけでなく、メイクも「SNSミーム」として楽しめることが共通の特徴となっています。
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