「コラム」連載 康熙奉(カン・ヒボン)のオンジェナ韓流Vol.80「韓国で特別に有名な昔話」

韓国でほとんどの人が知っているのが「温達(オンダル)と平岡(ピョンガン)姫」の話だ。私も大好きな昔話なのだが、物語は、高句麗の25代・平岡(ピョンガン)王(在位は559~590年)に泣き虫の娘がいたところから始まる……。

馬鹿の温達

平岡姫があまりに泣くので、平岡王は「泣いてばかりいると、まともなところに嫁に行けないぞ。せいぜい、『馬鹿の温達』の妻にしてもらえ」と口癖のように言った。この温達というのは、正直で優しい男だったが、病弱な母を抱えて貧乏のどん底にいた。身なりがあまりに汚かったので、周囲の人たちからいつも馬鹿にされていたのだ。
平岡姫が16歳になったとき、平岡王は娘を良家に嫁がせようとした。これに反発したのが平岡姫だ。
「あれだけ『温達の妻になれ』と言われたからそうします。王が前言をひるがえしてはいけません」
平岡王は怒ったが、平岡姫は宮殿を飛び出して温達の家に向かうが、王の娘が自分のところに嫁に来たことが温達は信じられなかった。

「人間とは思えない。狐か鬼が化けているのだろ」
平岡姫は追い返されてしまうが、それでもあきらめず温達の親子を説得した。あまりの熱心さに温達がついに折れると、平岡姫は金の腕輪を売って生活必需品を買いそろえ、さらに温達にこう言った。
「馬を買ってきてください。ただし、商人から馬を買うと高いので、彼らが見放すような痩せた馬にしてください」
温達は言われたとおりにした。平岡姫が痩せた馬を熱心に世話したので、いつしか馬は肥えて大きくなった。その馬に乗って温達は平岡王の狩りに飛び入り参加して、獲物を一番多くとった。そのとき、平岡王は初めて実物の温達を見て、大いに驚いた。

(2ページに続く)

2019.07.20