なくならないでほしい光景
B「それにしても、ソウルの街は騒がしいね」
C「でも、市場の賑わいがいいよ。ザワザワしていて落ちつきがないんだけど、かえって心がワクワクしてくる。商店の人たちが忙しく商品を出し入れしていたり、道路で自動車同士がぶつかっても警察が知らん顔だったり……」
B「東京では屋台がほとんどなくなったけど、ソウルはこれほどの大都会でありながら、屋台がそこらじゅうにある。覗いてみると、鉄板で焼きながら、おばちゃんたちが生き生きと働いている。こういう光景に惹かれるね」
C「子供の頃、日本がそんな雰囲気だった。通りに屋台が並び、バナナの叩き売りも出ていたよ。あの光景が日本の都会からなくなって寂しいと思っていたら、むしろソウルではその騒々しさが街の中心になっている。これだけは絶対になくなってほしくないね」
ビールを飲みながらのソウル談義。話は尽きず、ビールの空き缶がどんどん増えていった。
文=康 熙奉(カン ヒボン)