自由なふりが得意になった不自由な社会へ
英国演劇界の至宝トム・ストッパードがアンドレ・プレヴィンとともに俳優とオーケストラのために創作した異色作。
舞台はソビエトと思われる独裁国家の精神病院の一室。
誹謗罪でつかまった政治犯の男(アレクサンドル・イワノフ)と、自分はオーケストラを連れているという妄想に囚われた男(アレクサンドル・イワノフ)。
全く異なる状況、立場で同じ精神病院へ送り込まれた二人。
社会から完全にはみ出している人間を、社会はどう扱うのか…?
「良い子はみんなご褒美がもらえる」
英語の原題であるEvery Good Boy Deserves Favourは、五線譜を覚えるための英語の語呂合わせ。一番下からミ(一点ホ)、ソ(一点ト)、シ(一点ロ)、レ(二点ニ)、ファ(二点ヘ)で、この音は英語ではE,G,B,D,F,つまり" Every Good Boy Deserves Favour "と頭文字を覚えれば、どの線にどの音が引っかかるのか譜読みするときにすぐ思い出すことができます。
つまり私たち日本人が√2の値を「ひとよひとよにひとみごろ」と覚えるような言葉遊び、語呂合わせの一環です。
この語呂合わせのように「社会はそういうものだから、従っていればいいのだ」と教え込まれ、そして何の疑問もなく「社会はそういうものだから」と生活をしている自分たちの姿を想像してみてください。
自由な世界に生きているはずが、実はとても不自由なものに感じられるのではないでしょうか。
舞台上には35人のオーケストラ
本作は、舞台『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』『アルカディア』、映画『恋に落ちたシェイクスピア』等で、日本でも多くのファンを持つ英国劇作家の巨匠 トム・ストッパードが、俳優とオーケストラの為に書き下ろした異色作。彼の作品の特徴でもある言葉遊びと明瞭なユーモアと哲学的観念がふんだんに盛り込まれ、オーケストラがBGMや歌の伴奏を演奏する影の存在ではなく、劇中に登場するというかなり斬新な作品です。
堤真一 × 橋本良亮(A.B.C-Z)が初タッグ!
この異色作に挑むのは、硬派な役からユーモアたっぷりな個性的な役まで演じ分け、舞台だけでなく映画・テレビと幅広い活躍を続ける堤真一、メインボーカルとしてA.B.C-Zでの音楽活動の一方で、『コインロッカーベイビーズ』等の演技で魅せる俳優としての表現力に注目が集まる橋本良亮が主演を勤める。
全キャスト決定!魅力溢れるキャストが集結。
出演者には三谷幸喜『子供の事情』やテレビドラマ『コンフィデンスマンJP』で、個性豊かなキャラクターを演じ注目される小手伸也が二人の医師を、そして堤真一の息子、サーシャには子役時代からそのキャリアを積み、映画『サニー 永遠の仲間たち』『怪しい彼女』などの韓国を代表する女優、シム・ウンギョンが日本で初舞台を踏む。そのサーシャの教師には斉藤由貴がストッパード作品に初挑戦。そしてこの舞台の最後の登場人物となる大佐役には文学座の外山誠二と、実力派が肩を並べる。その他厳選なるオーディションで選ばれたアンサンブル7名で、ストッパードが今を生きる我々に問う「自由」というテーマに挑みます。
信じることの自由(堤真一)と想像することの自由(橋本良亮)
それぞれの「自由」のために
独裁国家の精神病院の一室。誹謗罪でつかまった政治犯の男(堤真一)と、自分はオーケストラを連れていると主張する妄想に囚われた男(橋本良亮)が精神病院で同室となる。想像することの「自由」(橋本良亮)と言論の「自由」(堤真一)を主張する二人。互いの「自由」を通して、「自由な世界」が故に他人と異なることへの「不自由さ」を感じる現代社会に、ストッパードが贈るアイロニー。
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