社会的な環境整備が必要
韓国では伝統的に子どもが生まれるときに「女より男」を望む傾向が強かった。
その結果、出産時の男女比が不均衡になっていた。特に顕著だったのが1990年代で、母親が妊娠しても女の子とわかると中絶してしまう例がいくつもあった。
実際に生まれたあとでも、男の子と女の子では家庭内で格差が生じることが多かった。
「男の子は母親が舐めるように可愛がる一方、女の子は将来他家に嫁に出すのであまり大事に育てない」
そんな理不尽なことが韓国でまかりとおっている時期があった。
さすがに今はそういう時代ではないし、韓国社会は全体として女性の地位向上に取り組んでいる。しかし、合計特殊出生率は低いままだ。
女性たちが歴史的に言われなき差別を受けてきたこと。
現在も女性が子どもを育てながら仕事を続けることが難しいこと。
さらには、韓国社会が経済的にも心理的にも不安定要素を抱えていること。
こうしたことが複合的にからみあっている。
しかし、無理に合計特殊出生率を上げる必要もない。「無理」は、男性よりも女性に過度な負担を強いるからだ。
男性と女性が協力して社会的に出産と育児の環境を整えること……このことに地道に取り組むしかない。それができなければ、韓国の合計特殊出生率は1を割って0点台に留まり続けるだろう。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
コラム提供:ロコレ
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