「イベントレポ」『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』 "ワイドショー見るよりも見るよりも勉強になる” ヤン・ヨンヒ監督ゲスト登壇トークイベント開催!

(C)Zorba Production, Su:m

MC: 現在、マダム・ベーはどちらの家族とも住まず、一人バーを営んで、両方の家族に仕送りしているそうです。
ヤン・ヨンヒ監督:すごく強いですね・・・。それにマダム・ベーさんはとても魅力的ですよね。脱北を決意するのもすごいですし、ベーさんって愚痴らないんですよ。なんで北に生まれたんだ、なんで自分だけがこんな思いをしなければならないんだ、とか毎日メソメソしていない。そういう人だったら、こんな風に成功していないと。脱北をするもしないのも自分のチョイスで、それを決行して、そのあとはさぁ次、と、とにかく前を向いていて、すごいバイタリティを感じますね。男っぷりがいい、とても魅力的な方。ユン・ジェホ監督もきっと、ベーさんをとても魅力的な人だと思ってみていますよね。私もどこかで惚れこむところがないと、長期間撮れないと思っているので、その点もとても共感できました。
脱北というテーマを教えよう、ではなく、この女の人の生き様みてよ、という感じが伝わりましたね。

他に脱北を描いた作品では、脱北者を描いたパク・ジョンボム監督『ムサン日記 白い犬』、監督が主演なんですが、素晴らしい作品で、これをみると、いかにワイドショーがつまらないか、と思いますよ。ニュースやワイドショーをみるよりも映画を観るほうが勉強になるかと。
こんな色々な人がいるんだ、こんな色々な人生があるんだ、ということを与えてくれるのが映画の素晴らしいところ。私もたくさん観なければと思っています。もちろん作らなければとも思っています(笑)
例えば日本から北朝鮮に帰国事業で渡った人たちは9万4千人弱いるといわれていて、9万4千本の映画ができると言ってもいいわけです。一人の人生に映画が一本どころではないから、一人の人生で10本くらい作れるとも言えますよね。学者さんは数字で示しますけど、一人ひとりの物語を描いていくというのが作家の使命だと思える。このドキュメンタリーのような素敵な作品がたくさん世に出てくると、元気がでますね。

私も劇映画とドキュメンタリー、両方準備しており、頑張って作ります。
ぜひワイドショーを見る時間を減らして、本作や『ムサン日記』をはじめとする映画や本などに触れてみて頂ければと思います。

(C)Zorba Production, Su:m

『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』(ユン・ジェホ監督)がついに日本公開!

シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開中!

本作は、現在シアター・イメージフォーラムにて上映中。その後、6月24日(土)より名古屋シネマスコーレ他全国順次公開。詳細は、公式サイトをご確認ください。 www.mrsb-movie.com

たった一年の出稼ぎのはずが 騙され売られた北朝鮮女性
母として妻として、二つの家族の間で揺れる、その数奇な運命の記録
十年前、家族のため一年間だけの出稼ぎのはずが騙され、中国の貧しい農村に嫁として売り飛ばされた、北朝鮮女性B(ベー)。最初は憎んでいた中国の夫と義父母との生活を受け入れ、そこで生き抜くために脱北ブローカーとなる。しかし北朝鮮に残してきた息子たちの将来を案じた彼女は、彼らを脱北させ、自らも韓国へと渡る過酷な道を選ぶ―。
この名もなき北朝鮮女性Bの生き様を記録したのは、フランスと韓国を拠点に映画製作し、これまでに5本の中短編映画がカンヌ国際映画祭に出品され、今最も注目される新鋭ユン・ジェホ。 大胆で鋭く、ときに美しい映像で、中国と北朝鮮そして韓国に引き裂かれるBの分断の人生を、韓国人である監督自身のアイデンティティへの疑問と闘いながら記録した。(3ページにつづく)

2017.06.18