取り乱す周囲
王宮内が騒然となってきた。
貞純王后が感情を露(あらわ)にした。
「主上の病状は中風のようなのだが、臣下の者たちは適切な薬をさしあげることもできないで、一体どういうつもりなのか」
左議政(チャイジョン/副総理に該当)の沈煥之(シム・ファンジ)が答えた。
「今や殿下は危篤状態になり、もはや申し上げる言葉を失っているような状況でございます」
その言葉に貞純王后が反論した。
「先王のときも昏睡状態から一夜で回復したことがあった。主上の病状も危篤とはいえ、まだそれほど時間が経っていないのに、なんということを言うのか」
恐縮しながら沈煥之が言った。
「今も継続して病状に合う薬をさしあげようとしています」
その言葉の通り、医官たちが正祖に人参茶などを飲ませようとした。しかし、すでに正祖は飲めるような状態ではなくなっていた。
(次回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)
出典=『実録!朝鮮王朝物語 「トンイ」から「イ・サン」編』
コラム提供:ロコレ
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