「コラム」第3回 康熙奉(カン・ヒボン)の国王毒殺実録/イ・サン編C

 

危篤に陥った正祖

貞純王后は、内侍(ネシ/王族に仕える宦官)を通して自分の意見を伝えさせた。
「今回の主上(チュサン/正祖のこと)の病状はかつての先王(英祖)のときと似ている。先王は回復したので、その当時さしあげた煎じ薬を詳しく調べ、医官たちで相談して良い薬をさしあげるようにせよ」
正祖の危篤を知って母の恵慶宮(ヘギョングン)も悲しみにうちひしがれた。
「東宮(正祖の息子で後の23代王・純祖〔スンジョ〕)が号泣しながらしきりと安否を知りたがっている」
今や王宮内のすべての人間が息をひそめて正祖の状態をうかがっていた。


医官が匙(さじ)を使って正祖に煎じ薬を飲ませようとしたが、とうてい飲める状態ではなかった。
再び脈を取ると、医官が床にひれ伏した。
「すでに望みがありません」
そう言うと、医官は声をあげて泣いた。(ページ4に続く)

2017.02.27