「インタビュー」ソン・ジュンギ、7月26日(金)全国公開 映画『このろくでもない世界で』オフィシャルインタビュー

-善意に基づいた行動が最悪の結果につながる過程がこの映画の魅力のようだ。チゴンにとって本当に気になった質問は「なぜ最後まで町を離れないのか」だ。ある程度力も、お金もあるだけに離れられない状況でもないようだが…。

ジュンギ:現場で監督やホン・サビンと最も激しく話を交わした部分がまさにその質問だった。チゴンとヨンギュの最大の違いは希望の有無だ。ヨンギュは「ファラン」(原題。韓国語でオランダ)に漠然とした希望を抱く。それがたとえ誤った情報、存在しない理想郷でも構わない。故郷を脱出してそこに行きたいという気持ちを抱くことが重要だ。一方、チゴンはすでに終わった人だ。すり減って、どこかに旅立ちたいという欲望などもうない人。ヨンギュが故郷を離れることをあきらめたなら、チゴンのようになるのではないかと思う。うんざりする場所に疲れはて、いまや去る勇気も出せない人物だ。だから最後に最も卑怯な形の脱出を試みるのかもしれない。ある意味、非常に自虐的で変態的な人物でもある。どれだけリアルなのか、理解できるのかとは少し違うと感じた。むしろ「映画的」なアプローチだと思う。

-チゴンは貯水池に閉じ込められた、もしかしたらすでに死んだ魚のようだ。映画でも釣り場、釣り針、魚チゲなどの象徴的な物が繰り返し登場する。

ジュンギ:ヨンギュと魚のチゲを食べる場面があるが、ヨンギュとチゴンが共感を形成する重要な瞬間だ。夜中の2時頃から一晩中チゲを食べたが、終わる頃には生臭いにおいがした。(笑)苦労した分、場面がよく撮れたようでやりがいがあった。

-ホラー映画の現場は和気あいあいとしているという話がある。『このろくでもない世界で』は床にくっつきそうなほど重くて暗い映画だが、現場の雰囲気はどうだったのか。

ジュンギ:熾烈ながらも平穏だった。台風の真ん中が静かなように。皆簡単ではない環境で最善を尽くしたが、その一方で撮る時は不安感がなかった。キム・チャンフン監督と主演のホン・サビンはいずれも新人なので、バランスを取らなければならないという責任感が少なくなかったが、得るものがはるかに多い現場だった。むしろ私自身にとって息を吸えるようになるための穴を開けてくれた映画だったというか、現場で癒されることが多かった。商業映画を撮影する時に感じた渇きを解消する時間でもあった。本当に良い映画を作りたいという気持ち、映画らしい映画が作られているという確信ができた。責任を感じる部分があれば、このように完成された映画が最大限多くの方々に紹介されてほしい。プロモーションのためにどこへでも行くつもりだ。釣り雑誌とか釣りの番組に出るべきかな?(笑)

-とても満足のいく撮影だったようだ。
ジュンギ:満足度を点数であげるとしたら93点くらい?内心、心の中の点数は90点にやや及ばない89点だったが、このようにカンヌまで来たから4点追加!(笑)俳優にとって最高のプレゼントは良い作品に出会うことだという当然の事実を改めて実感した作品だ。このようにカンヌで観客と会うことまで、すべての瞬間がありがたい。

<STORY>
継父のDVに怯える18歳のヨンギュ(ホン・サビン)は、義理の妹ハヤン(キム・ヒョンソ)を守るために暴力沙汰を起こして高校を停学、その上、示談金を求められる。生き抜く術のないヨンギュは、地元の犯罪組織のリーダー、チゴン(ソン・ジュンギ)の門戸を叩くほかなかった。仕事という名の“盗み”を働き、徐々に憧れのチゴンに認められていくが、ある日、組織の非情な掟に背いてしまい……。

このろくでもない世界で、ほんの一瞬でも彼らに陽が注ぐことはあるのだろうか?

監督・脚本:キム・チャンフン(初長編監督作品)
出演:ホン・サビン、ソン・ジュンギ、キム・ヒョンソ(BIBI)
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
公式HP:happinet-phantom.com/hopeless  X:@hopeless_movie
2023年/韓国/カラー/シネマスコープ/5.1ch/原題:화란/英題:HOPELESS/123分/字幕翻訳:本田恵子/R15+
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7/26(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

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2024.07.13