作家・汐見夏衛によるシリーズ累計発行部数55万部突破の同名ベストセラー小説を実写映画化した『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』。10月21日には千葉県柏市にある映画館 キネマ旬報シアターで酒井麻衣監督と村山えりかプロデューサーがティーチインイベントを実施した。
学校ではマスクが手放せず、本心を隠して生きる茜(久間田琳加)と、自由奔放で絵を描くことを愛する銀髪のクラスメイト・青磁(白岩)。誰にも言えない痛みと過去を抱えたふたりは、いつしか惹かれ合い、言い出せなかった想いが溢れ出していく――。純度100%のエモーショナルで色鮮やかなラブストーリーだ。
映画公開から1か月半が経過するも、引き続き絶賛の声がSNSを中心に溢れている。この日も多くの観客が劇場に駆け付けた。2017年の原作発表と時を同じくして本作の企画をスタートさせた振り返る村山プロデューサーは「原作小説は同時代性がある作品で、恋愛物語である一方、大人に刺さる物語」と評しながら「酒井監督は人間の心に寄り添う演出してくれる方。青磁や茜の孤独に寄り添ってくれると思った。物語の構成を変えてはいるけれど、画的に美しいアイデアをぶっこんでほしいと期待した」と酒井監督の起用理由を紹介した。
一方、脚本時からの変更について酒井監督は「廃遊園地のくだりやペンキのくだりは二人(久間田&白岩)に自由にやってほしいという話をして、脚本には感情だけを書いて自由にやってもらいました。また茜が青磁を呼ぶときに“深川君”から“青磁”に変わっていくのは脚本にはなくて、お二人のお芝居を見た時にそっちの方がいいと思って変更しました」と明かした。
W主演の一人、久間田について村山プロデューサーは「久間田さんは目の表情が素晴らしい。ほぼマスクを着けての演技でしたが、笑った時の目が寂しそうだったり、マスクを外した時の笑顔が素敵だったり、顔の表情が素晴らしい」と絶賛。もう一人の主演・白岩については「青磁は銀髪男子なのでコスプレチックになるかと危惧したけれど、ほぼ銀髪で顔合わせにいらした白岩さんを見た時に、これは青磁だぞ!と思った。ビジュアル的に素晴らしい。また青磁は王子然としていてカリスマ性もあるので、長いセリフは作らず、そこにいるだけで説得力のある青磁像を作ろうと思いました」と狙いを明かしていた。酒井監督は主演2人について「2人とも努力家で、原作を大事にしながら役と向き合ってくれました」と感謝していた。
観客とのQ&Aでは、見事な夜明けを映し出した撮影に対する質問が挙がった。これに酒井監督は「スタッフ&キャスト全員の運の良さに尽きます。撮影に入るにあたり不安だったのが、果たして茜と青磁が感動するくらいの夜明けの空が撮れるのか?ということ。これは誰にも予想がつきませんでした。雨や雪が降った後の方が空気も澄むということで、そのようにスケジュールを組みましたが、本番を迎えるまであの色が出るかどうかはわかりません。まさにみんなの運の良さです」と奇跡的ショットだったと自負。村山Pも「季節が冬というのも空気が澄んでいて良かった」と胸をなでおろしていた。
また「映画監督として大事にしているマインド」について質問された酒井監督は「できない理由を探すのではなく、できるようにするにはどうすればいいのかを考える。これは父の言葉ですが、その言葉を大事にどんな時も一番のベストを探すようにしています」と答えた。
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