すると横山も「音楽の立場で、様々な監督、プロデューサーと付き合いがあるので、色々なやり方を見てきましたが、先ほどおっしゃられたように、酒井監督は現場での状況を見て柔軟にジャッジするんですよね。それが監督の色になると思うんですけど、酒井監督は、その時の素材、演技をつなぎ合わせるのが本当にうまいと思っています」と解説。そのうえで「僕ら(音楽チーム)はあくまで絵具なんですよ。酒井監督が(クライマックスシーンの屋上での青磁と茜のように)シャーッと塗っていくという。本当にすてきな映画になったと思います」と付け加えた。
さらにその質問を深掘りするように、別の観客からは「演出の際は、具体的なイメージを決めてそれを具現化していくのか、それとも作品によってスタイルを変えていくのか。その割合はどれくらいなのか?」という質問も。それには「わたしはそのバランスをうまくとりたいなと思っていて。よく映画づくりを料理に例えるんですけど、たとえば最初にカレーを作りたいということは決めています。でも材料は何なのか、誰と作るのか、そこにあるのはシーフードなのか、トマトなのか、色々な条件があったとしても、その条件下で作ることのできる一番おいしいカレーをいつも目指しています。今回でいうと、屋上でペンキを塗り合うシーンや、遊園地で戯れるシーンなどは二人(白岩瑠姫と久間田琳加)のアイデアや動きにお任せしました。一方では、屋上のシーンなどで、青磁が手を差しのべる、もしくは茜が手を差しのべるときは、『こういう手の伸ばし方がいいです』と細かく言ったり。そこはバランスを見て、映画全体を見た時に、お客さんに『おいしいね』と思ってもらったり、『もう一回見たいね』と言ってもらえることを目指しています」とそのポリシーを語った。
その話を聞き、「面白い話ですね」と納得した様子の横山は、「ラッシュ映像の時点では、音楽がついていないのが当たり前なんですけど、8割方、絶望してしまうんです(笑)それでも、酒井監督は我々が何をやるか分かっていて投げてくれている。音楽を信頼してくれているんだな、と思います。」と語ると、酒井監督も「今回で言うと、屋上を塗りつぶすシーンはより音楽が際立つシーンですけど、ほかにも茜ちゃんが恋心に気付いて、リップを塗るシーンや、バスで窓ガラスに浮かんだハート見るシーンはセリフがないので、同様にまさに音楽で語っているシーンですね」と述懐。すると横山は、「茜のリップのシーンはグッときますよね。やはり自分が観てグッとこないとだめなので。そういう意味では自分が観てグッとくるまで押し上がるかどうか。それは音楽の力もありつつ、演出の力もありつつ、いろんなものが組み合わさってできる総合芸術になるかというのを気にしています」と映画音楽の制作における自身のスタンスを明かした。
さらにこの日は酒井監督作品を彩る色味の話、効果音の話など、映画を深掘りする話が続々と登場。その興味深いエピソードの数々に観客も熱心に耳を傾ける。横山が「こういうイベントって面白いですね。酒井監督のお話を聞いて、僕もめちゃくちゃ面白いなと思いました」と語ると、酒井監督も「わたしは(映画制作の)裏側の話が大好きで、今日は本当に楽しかったです。本当にたくさんのスタッフさんのアイデアが集まってできている作品なので、またこういう風に裏側とか、いろんな部署のアイデアを紹介できたらなと思います。これからもこの作品を愛してもらえるとうれしいです」と笑顔を見せた。
今をときめく最旬のキャストと次世代の日本映画界を担う若き才能が贈る、この秋いちばんのラブストーリー、『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』は絶賛上映中。
【CREDIT】
出演:白岩瑠姫(JO1) 久間田琳加
箭内夢菜 吉田ウーロン太 今井隆文 / 上杉柊平 鶴田真由
監督:酒井麻衣
原作:汐見夏衛「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」(スターツ出版 刊)
脚本:イ・ナウォン 酒井麻衣
音楽:横山克 濱田菜月 主題歌:JO1「Gradation」(LAPONE Entertainment)
製作:『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』製作委員会 制作プロダクション:C&Iエンタテインメント、アスミック・エース
配給:アスミック・エース
■コピーライト:©2023『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』製作委員会
■ 公式サイト: https://yorukimi.asmik-ace.co.jp/