「コラム」康熙奉(カン・ヒボン)のオンジェナ韓流Vol.253「最終回を終えた『愛と、利と』」

韓国JTBCで放送されていた『愛と、利と』は、2023年2月9日の第16話で最終回となった。主演はユ・ヨンソクとムン・ガヨン。「愛はどのように理解されるのか」ということをテーマにして、日本ではNetflixでも同時配信された。
画像=JTBC


愛の感情の変化
『愛と、利と』の主要なキャストは4人だった。
ユ・ヨンソクが演じる銀行の係長ハ・サンス。誠実な人間だが、愛に対して臆病なところがある。それゆえ、常に悩みが深いという印象だ。
ムン・ガヨンが扮する窓口係のアン・スヨン。容姿端麗だが、高校時代に最愛の弟が事故死して心に傷を持っている。
ハ・サンスの大学時代の後輩で支店では上司にあたるのがパク・ミギョン(クム・セロク)。裕福な育ちで、ハ・サンスとは価値観が違う。
アン・スヨンと同棲することになったチョン・ジョンヒョン(チョン・ガラム)。支店で守衛をしながら警察官試験に合格するための勉学に励んでいる。
以上の4人の生い立ちや職場での現況を扱いながら、『愛と、利と』は「自分の立場によって愛の感情がどう変わるのか」という点を繊細に描いていた。

ハ・サンスの躊躇

『愛と、利と』は、登場人物たちの「迷い」を克明に取り上げていた。
最も象徴的なエピソードになっていたのが、ドラマ序盤にハ・サンスが取った行動だ。
彼はアン・スヨンとデートの約束をした。しかし、ハ・サンスは仕事のトラブルで大幅に遅刻してしまい、待ち合わせの場所にあわてて駆け付けた。その様子をアン・スヨンは2階の窓越しに見ていた。そのとき、ハ・サンスは一瞬だが迷い抜いて、駆けつけるのをやめる素振りをした。一部始終をアン・サンスが見ていたのに……。
最後は覚悟を決めてハ・サンスも息を切らしてやってきたのだが、もうアン・シヨンはいなかった。
あのとき、なぜハ・サンスは躊躇(ちゅうちょ)したのか。
もし彼が迷わず駆け付けてアン・スヨンと会っていれば、2人はそのまま付き合っていたに違いない。しかし、そうならなかったから、様々なシチュエーションが生まれた。
ドラマは仮想現実だ。起こらなかったことをあえて現実として見せることで、登場人物の内面をスリリングに見せてくれる。
主人公のたった一つの「迷い」から物語を縦横に広げていった『愛と、利と』。最終回が終わった後にモヤモヤと余韻を引きずるところも、制作側が意図した展開だったかもしれない。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

2023.02.11