さらに、選挙をテーマにした『当確師』『当確師 十二歳の革命』の小説を執筆されている真山さんからみて、本作の描写はどう感じたかを問われると「ひとつは韓国の国民性、国民の政治に対する関心度があきらかに韓国のほうが強烈で、強烈なところのほうが仕掛けがしやすい面がある。日本の場合は、ずっと誰がなっても一緒だ、選挙には行かないし、与党に協力したほうが得だし、という状況で、そこから波を起こすことはかなり大変。小説の中で一番やらなきゃいけないことは、波を起こすこと。楽勝の人に危機感を与えて、突然自分がピンチになって慌てふためくところにチャンスがある、ということをやらなければならないんです。この『キングメーカー』の場合は、もう選挙自体が大変なので、この政治環境は羨ましいなと思いました」と率直な思いを語る。
その一方で「もう一つ大事なのは、選挙って当選が終わりではない、政治家はそこから始まるわけです。ですので、よくあるネガティブキャンペーンをやると、結果的にそれで勝った人というのは、本当に汚い手で政治家になったよね、とあまり期待されなくなるもの。どうやって勝ったか、というのが意外に大事」と解説。 そして現在「小説宝石」で三作目を連載中とのことで、「それが与党の総裁選の話。映画でも総裁選の場面がでてきますが、ヒリヒリするなぁと。でも私はこれを見てしまった以上、私はこの手法を使えないんだ、観なきゃよかったと思いました(笑)」と意外な話も。
すると松崎さんから小説『当確師』より、「傲慢な人が、自分を傲慢だと自覚できないのと一緒で、誠実な人も自覚なんてしません。だからこそ誠実な人柄が輝くんです」という、松崎さんが読んでドキッとした一節が紹介されると、真山さんは「いいこと言ってますね~」と返す一幕も。
最後に真山さんは、「近年、政治に無関心ではいられなくなっている。為替が安くなり、遠い国だけれど戦争が起きたり、国内不安があったりすると、それを変えられるのは残念ながらやはり政治。自分たちもちょっとだけ政治に関心をもたなければ、という時は来ている。そういう意味でも良いタイミングの映画だと思います」と熱く語り、本作のトークイベントが締めくくられた。
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